高市政権が発足して1カ月が経過した。各種世論調査の結果を見ると、史上空前といってもよい高い支持率をたたき出し、まずは順調な船出となったといえる。
いっぽうで、彼女が当初打ち出していた勇ましく、聞き心地の良かった物価高対策や消費減税などに関しては日が経つにつれて、これまでの自民党政権と何ら変わりのないばら撒き政策(おこめ券、プレミアム商品券、電気代ガス代補助など)ばかり。減税にいたってはほぼ看板倒れの状況にある。国民の期待が大きく膨らんでいるときだけに、失望が広がると一気に支持率が下落する恐れもあるので、中国との外交問題を含め早くも正念場を迎えたようにも映る。
不動産マーケットへの影響は?
こうした中、10月29日、30日に開催された日本銀行の金融政策決定会合では、政策金利(現行0.5%)について据え置きの決定がなされた。高市早苗氏が首相になる前に「今、金利を上げるのはアホ」と唱えたことに怖気づいたわけでもないだろうが、来年春闘における賃金上昇などを見極めるとして据え置きとした。
積極財政の推進で日銀が利上げをせずとも、マーケットは敏感だ。積極財政を支えるための国債大量発行を見越して、利回りは急上昇。10年物国債利回りは11月15日現在1.708%となり、20年物は2.716%になっている。
さて金利の上昇は不動産マーケットにどのような影響を与えるかを考えてみよう。すでにマンションなどの住宅を変動金利型住宅ローンで購入している世帯にとって、日銀による政策金利の引き上げは痛手だ。変動金利型住宅ローンの金利は政策金利に連動する短期プライムレートに連動するからだ。
金利を低いまま据え置くと…
仮に5000万円を35年元利均等返済で借り入れている場合、当初の金利が0.8%ならば毎月の返済額は13万6530円だが、0.5ポイントの上昇(1.3%)で14万8241円と1万1711円、1ポイント(1.8%)で16万545円と2万4015円の負担増となる。マンションの管理費や修繕積立金もインフレの進行で値上げが相次ぐ中、かなりの負担増となる。インフレで値上がりするのは管理費ばかりではない。生活物価の上昇は賃金の上昇を上回り、実質賃金はマイナスが続いている。
物価上昇の原因の一つとして考えられるのが円安だ。円安は対ドルばかりが注目されるがユーロをはじめ諸外国通貨に対しても激しい円安が生じている。多くの食料品を輸入に頼る日本では円安は生活物価を直撃する。円安になる背景には欧米諸国との金利差がある。金利を低いまま据え置くことは金利差を放置し、円安をさらに進めることにつながる。
高市氏が首相についてからすでに円ドルレートは7円の円安になっている。これでは多少のバラマキをやったところで、電気やガスなどのエネルギー資源のほとんどを輸入に頼っている日本では効果が為替によって相殺されてしまうことになる。
