ファンに最後までサインを続ける優しい男
昨年秋のナゴヤ球場秋季キャンプ。選手会長に就任した福田は、誰よりも明確な意思と自覚を持って練習に取り組んでいるように見えた。フリーバッティングでは一打席毎フォームに気をつけ、体に近いポイントでボールを捉え、センターから右に打ち返す練習を延々と繰り返していた。豪快なスタンドインを期待して見ているファンとすれば物足りなさは残ったが、漠然と練習をこなしているように見える多くの若手選手とは明らかに意識の高さが違っていた。
筆者は沖縄キャンプには行けなかったが、配信やファンの投稿画像を見る限り、福田は「ヒゲ」を手に入れる練習を継続していた。フリーバッティングの終盤には「いつでもボインは出せますよ」といった豪快なアーチも見せ、調整は順調であったように感じられた。
開幕当初は調子が上がらなかった福田だったが、5月には打率を3割近くまで上げ、懸念されたサードの守備も安定し、いよいよ「ヒゲ」を手にしたかと思われた。しかし、交流戦辺りから甘い球を打ち損じたり、チャンスに結果が出ない苦しい日々が続く。またライバルの高橋周平や亀澤恭平が調子を上げてきたこともあり、夏休みに入ってからはベンチスタートもしばしばだった。
けれど、不器用だけど一途に信じた道を貫き、努力し続ける福田の背中を、ナゴヤ球場で出待ちのファンに最後までサインをする福田の優しさを、ドラゴンズファンみんなが見ている。その証拠にナゴヤドームでは、福田の背番号55を身にまとったファンが目立ってきた。
そしていつか、不動のレギュラーに定着し、筒香やギータや山田哲人のようにファンを魅了する数多くの豪快なホームランを打つ「ヒゲとボイン」の両方を手に入れた選手になることを、ポストシーズンや東京オリンピックで日の丸を背負い、世界に「ボイン」を見せつける事を、心から願っている。
「ああ 男にはつらくて長い二つの道が
ああ 永遠に 僕を迷わすヒゲとボインが
夜空に浮かぶ」
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