19歳のとき、アルバイト中の事故で左目の眼球が破裂し、視力のほとんどを失った、かたのめいさん。現在は会社員として働く傍ら、「片目シンガー」として活動し、今年8月にはメジャーデビュー曲「Croissant(クロワッサン)~欠けた世界で気づけたもの~」をリリースした。

 そんなかたのめいさんに、怪我をしたあとに感じた日常生活の苦労や、左目をほぼ失明したあとの人間関係、怪我をしたあと世界中を旅するようになった理由などを聞いた。(全3回の2回目/3回目に続く

かたのめいさん ©三宅史郎/文藝春秋

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道で人とぶつかったり、駅の階段で転んだりしたことも

――左目をほぼ失明してから、生活していて大変だったことはありますか?

かたのめいさん(以下、めい) これまではなんともなかった道が、片目だと全然見え方が違って。特に人が多い場所だと、上手く距離感が掴めずに何度も人とぶつかってしまったり、駅の階段で転んだりしたこともありました。

 あと、文字が書きづらくなったし、メイクもすごくしづらくて。たとえば、怪我をする前は、アイラインは引きたい方の目をつぶって引いていたんですよ。でも、片目になってからは、目をつぶったら見えないから引けないじゃん、と。

――今までできていたことが、できにくくなったと。

めい 自転車や車を運転するのも怖くなってしまって。車の運転をするときは、助手席に誰か座ってもらうようにしてました。

 もう片目の生活をし始めて10年経ったので、今はどれも問題なくできるようになりましたけど、当時は「両目だからできていたことって、こんなにあったんだ」とびっくりしましたね。

ケガをする前のかたのめいさん(写真=本人提供)

「人ってこんなに冷たいんだ」当時はとにかくネガティブだった

――生活している中で、特に困ったことはありましたか?

めい 困ったというか、「誰も私の辛さをわかってくれない」と思い込んでいました。外を歩いてて転んだり、倒れてしまったりしたとき、助けてくれる人がほとんどいなくて。大きな眼帯をしていて、明らかに何かありそうな私を好奇の目で見てくる割には、私が本当に困っているときには目を背ける。

 今だったら、「助けるときにセクハラだと思われたらどうしよう」とか、周りの人たちにもいろんな思いや事情があるんだと考えられます。でも当時はとにかくネガティブだったので、「人ってこんなに冷たいんだ」「人間嫌い」と思ってましたね。