19歳のとき、アルバイト中の事故で左目の眼球が破裂し、視力のほとんどを失った、かたのめいさん。現在は会社員として働く傍ら、「片目シンガー」として活動し、今年8月にはメジャーデビュー曲「Croissant(クロワッサン)~欠けた世界で気づけたもの~」をリリースした。
そんなかたのめいさんに、歌手を目指すようになったきっかけ、歌手活動やSNS発信に対する反響、片目失明者が直面している社会の問題点などを聞いた。(全3回の3回目/1回目から読む)
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「うちには無理だな」歌手になる夢をあきらめた過去
――めいさんは現在、歌手として活動していますが、もともと歌は好きだったんですか?
かたのめいさん(以下、めい) 3歳の時からエレクトーンをやっていたので、音楽にはずっと触れてきた生活でした。小学生の時には、mihimaru GTのファンクラブに入って、母と一緒に出待ちしたり、武道館のライブに行ったりもしたんです。
ライブではお客さんがみんな泣いてて、mihimaru GTのふたりも泣いてて、会場が一体となった瞬間があって。そのときに「歌手ってすごい。私もこんなふうに人の心を動かせるアーティストになれたらかっこいいな」って思ったのは覚えてますね。
――その頃から、歌手になりたいと思っていた?
めい なりたい気持ちはあったけど、本格的に目指そうとは思っていませんでした。高校生の時にオーディションを受けて養成講座には合格したんですけど、お金がかかると聞いて。母子家庭だったので、「うちには無理だな」と断念しました。
「誰かを元気にしたい、世界に発信できることをしたい」海外で歌を披露するようになった
――左目を怪我をしたあと、海外を旅する中で、旅先で歌を披露していたそうですね。
めい 旅先で誰かを元気にしたい、世界に発信できることをしたい、と思ったんですけど、英語がしゃべれなかったんです。でも歌だったら、言葉が通じなくても伝わるじゃないですか。
それに、誰かを元気づけるためには、自分も幸せにならないといけないと考えたんですよね。だったら、自分が好きで、心から楽しめる方法が良いと思って、現地の人の前で歌うことにしました。当時は「音楽×世界平和」とか、壮大なことを考えてましたね(笑)。
――海外で歌を歌ってみて、どうでしたか。
めい 音楽はやっぱり世界の人たちと繋がれるんだって実感しました。それに、旅先で歌手への憧れを話したら、応援してくれる人がたくさんいたんです。それもあって、日本に戻ってからも「歌うことは続けていきたい」と思いました。

