顔を突き合わせていると話が進まない

このケースからわかるのは、本人同士の話し合いだと離婚の交渉がなかなか進まないということです。

離婚するほど不仲な関係では、相手の主張を冷静に受け止めることも難しく、感情的な意地の張り合いになってしまいがちです。

特に同居のままでは、毎日顔を合わせるため、冷静な判断ができなくなることが多いです。膠着状態が続き、話が前に進まなくなってしまいます。

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この状態で離婚調停を行っても、夫婦げんかの場が裁判所に広がるだけです。

事例の中でも書いた通り、調停は両方の当事者が別々に調停室に入ります。それは顔を合わせてしまうと冷静な話し合いができないためです。

せっかく調停の仕組みがそうなっているのに、家に帰ればまた元通りに顔を合わせてしまうと、意味がありません。

別居したほうが、話が進みやすい

どちらかが家を出るだけでも、離婚に向かって進んでいるという意識が生まれて、物事が動き始めます。譲れることは譲れるようになることが多いです。

実際に調停の場では、調停委員から、離婚を見据えているなら別居をするように勧められることが多いです。

「家を出たら不利になるのでは」と考えて身動きが取れなくなる方も多いですが、占有しているかどうかで権利が変わることはありません。そのため、家に残るかどうかよりも、冷静に交渉できるようにすることの方が重要です。

離婚の条件や交渉の方法に不安がある場合は、弁護士に相談してみることをおすすめします。

堀井 亜生(ほりい・あおい)
弁護士
北海道札幌市出身、中央大学法学部卒。堀井亜生法律事務所代表。第一東京弁護士会所属。離婚問題に特に詳しく、取り扱った離婚事例は2000件超。豊富な経験と事例分析をもとに多くの案件を解決へ導いており、男女問わず全国からの依頼を受けている。また、相続問題、医療問題にも詳しい。「ホンマでっか!?TV」(フジテレビ系)をはじめ、テレビやラジオへの出演も多数。執筆活動も精力的に行っており、著書に『ブラック彼氏』(毎日新聞出版)、『モラハラ夫と食洗機 弁護士が教える15の離婚事例と戦い方』(小学館)など。
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