アナログといえば、賞の選考にあたる『現代用語の基礎知識』もしぶとく紙で出版を続けている。かつて1980年代から2000年代にかけては、『現代用語の基礎知識』のほかにも『イミダス』(集英社)、『知恵蔵』(朝日新聞社)と各社が時事用語事典を毎年刊行してしのぎを削っていたが、ほかの2冊は2007年にそろって休刊し、ネットへと移行した。
『現代用語の基礎知識』もピーク時は1600ページを超える分厚さだったが、いまでは5分の1以下の300ページ余りとずいぶんコンパクトになった。それでも、自由国民社という老舗ながら規模はけっして大きくはない出版社がこの事典の刊行を続け、その収録語をベースに新語・流行語大賞を続けていることに改めて驚かされる。
考えてみれば、この賞は小さな出版社が自主的にやっていることにすぎないのに、反響の大きさからすると、受け手のほうがちょっと権威扱いしすぎているのかもしれない。大塚編集長も次のように語る。
「権威でも何でもないんですよ。賞金もないし、盾をお贈りしているだけで。ただ、面白がってほしいなと思ってやってるところは変わらないんですよね。毎年、色々と批判的なことも言われますが、だからやめようよなんて言うつもりもないですし、言葉って面白いし、言葉の力はまだあると思うので、続けられるかぎりは今後もやっていきたいと思っています。
もちろん、いまは、女子中高生を対象にした『JC・JK流行語大賞』や三省堂さんの『今年の新語』などもありますし、選ぶ方法もネットでランキングが一発で出てくるような時代になっていて、もっとうまいやり方はあるのかもしれません。ただ、うちは、あくまでアナログでやるほうが面白いかなと思っていたりもします」
いまあらためて見直したい「言葉の力」
いくらAIなど科学技術が発達しても、人間が言葉で思考することには変わりはない。だからこそ時代ごとに力を持つ言葉が出てくるし、ある特定の言葉が人々の考えや行動を縛ってしまうことさえある。新語・流行語大賞が、ノミネート語の発表の時点から話題を呼んでいるのも、ひとえに言葉の力ゆえだろう。むしろ賛否両論あがるのが健全なのかもしれない。年末の話の種として、また年ごとの記録としても、今後も続くことを切に願いたい。
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