体長・体重は日本のヒグマと同じくらいで、オスで2メートルから3メートル、体重は大きな個体になると300キロ以上に達する。中には600キロを超える個体も存在するとされる。
アラスカ州には約3万頭のグリズリーが生息しているが、個体数は減少傾向にあり一時は絶滅危惧種に指定されていた。
トレッドウェルはメディアを通じて有名になっていった。「ディスカバリーチャンネル」などに登場し、著書も刊行された。自然保護基金の創設などによって、環境保護活動家としての存在感が大きくなっていた。
アルコール依存症に苦しんだ時期を乗り越え、まさに人生の絶頂期を迎えていた。そんな時に突如として悲劇が訪れる。
キャンプを「強行」した本当の理由
2003年9月29日、トレッドウェルは恋人のエイミー・ヒューグナードとともにアラスカ半島のカトマイ国立公園を訪れ、キャンプを張った。
ただ、これはトレッドウェルとしてはかなり遅い時期のキャンプだった。
クマは冬になると冬眠する習性を持っている。そのため、秋になるとできるだけたくさんの食料を食べて、脂肪を蓄えようとする。その過程で思うようにエサが得られないと、人間を襲う危険性も高まる。日本でも9月から10月になるとクマによる被害が増加するのはこのためだ。
トレッドウェルも通常はもっと早い時期にキャンプしていたが、この年はお気に入りのクマ(おそらくトレッドウェルにより「ダウニー」と命名されたクマと考えられる)を見るために、いつもと異なる時期にキャンプを強行したようだ。
クマの「胃の中」から見つかったもの
10月5日、トレッドウェルは知人との衛星電話で「お気に入りのクマを発見した」と嬉しそうに語ったとされる。
彼のテントが襲撃されたのは、その直後のことだった。
翌10月6日の午後、トレッドウェルをピックアップする飛行機がやってくる。飛行機のパイロットがキャンプ地に向かうと、そこには複数のクマがたむろし、何かを食べている最中だった。