人気職種「マンションの管理人」の実態
Gさんは5社ほどのマンション管理会社に履歴書を送った。すぐに全国展開している不動産管理会社1社から連絡があり、契約社員として採用された。時給は995円で、福岡県の最低賃金992円(2025年8月現在)とほぼ同額。健康保険と厚生年金にも加入できた。月の手取りは10万円だ。
「もうちょっともらえるとやる気も出ますけれども、まあ仕方がないと思っています。慣れるまでは3~4か月かかりました。それまではデスクワークだったのに、急に体を使う仕事になったので、思ったより疲れが出て大変でした」
自宅を朝7時に出発し、バスで勤務先のマンションへ移動。8時半に到着、作業着に着替え、コーヒーを飲んで一息入れる。勤務開始は9時。まずは外構の掃除だ。マンションの前の道路に落ちている落ち葉や吸い殻などを竹ぼうきで掃き、ゴミを拾う。さらに花壇の草引き、自動扉や入口のガラス拭き。
「夏と冬の外掃除はキツイです。濡れ雑巾で冬にエントランスの拭き掃除をするのは、手がかじかむ。夏は暑くて汗が止まらない。60世帯が暮らすマンションなので、掃除だけで3時間くらいかかります」
使う道具はほうきと雑巾。階段部分の手すり、エレベーターのボタンなど、一通りの拭き掃除を行う。
「スマートフォンの歩数計を見ると、マンションの中を移動しているだけで5000歩くらい歩きますね。通勤の往復も入れると、1日1万歩くらいは歩いています」
マンションの理事会や総会が開かれる時は、理事会から預かった書類をコピーし、それをポスト投函する。結局、仕事のメインは清掃で、それ以外は管理人室に座って出入りする人を見張る。
「マンションの住民の顔はだいたい覚えますし、親戚や知人もわかってきます。『あ、この人見たことないな』という人が入ってきたら、注意して見たり、挨拶するようにしています」
「想定内です」と語るGさんの本音は…
上場企業に勤めていたというGさん、現在の仕事に就いて戸惑いはなかったのだろうか。
そんな質問をすると、Gさんは憮然としてこう答えた。
「現役時代と違う仕事をすることは想定内です。責任感を持って取り組むという意味では、どんな仕事も同じではないでしょうか」
「想定内」という言葉を使うのは、弱みを見せたがらない人だ。責任感を持って仕事しているという自己意識が、どこかこの仕事に満足を得られていない感情の裏返しに思えた。
