アラフィフも「若い人は大歓迎」と言われて

 清掃会社の社員という60代と思われる男性が面接してくれた。この清掃会社は、都内の病院やオフィスビルなど、さまざまな施設に清掃員を派遣していて、この病院には8人の清掃員を送り込んでいる。

「若い人は大歓迎。よろしくね」

 ちょうど居合わせた来年80歳だという清掃員の女性に挨拶された。若いといってもアラフィフの筆者である。ここの清掃員は60代後半~70代の男女、あとは30代のベトナム人の青年。シニアと外国人は、人手不足の現場では定番のメンツだ。

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 午前と午後で4人ずつに分かれ、勤務時間はいずれも4時間。しかし、控室に貼られた掃除の分担表は穴だらけ。欠員は今いるメンバーが分担して埋めているようだった。

 病院の業務用エレベーターに「和顔悦色施」という言葉が、テプラで貼られている。意味をググると「仏教用語、優しい笑顔を施すこと」とあった。

よその会社に清掃員として出向する「左遷」

 仕事の開始は朝6時半。

 掃除用具は、モップのノズル、コードレスの掃除機。さらに付け替え用の濡らしたモップ10枚、タオル3枚、ゴミ袋、洗剤などが入った買い物カゴを渡された。これらワンセットを持って、それぞれの持ち場に移動する。持ち歩くだけでかなりの重労働だ。自分が70歳になった時、これを持って移動できる気がしない。

写真はイメージ ©KeyRabbits_イメージマート

 清掃のやり方は、面接した社員が教えてくれた。60代かと思っていた彼は実は50代(というかまだ50代前半)、よその会社から出向して、この清掃会社で働いているという。

「まあ左遷ってやつですよ。もともと小売業の会社に勤めていたんですが、そこからこの清掃会社に来ているんです」

 老けこんだ50代社員は、モップのかけ方を教えながら語った。よその会社に清掃員として出向させる、世の中にはこんな「左遷」があるのか。いきなりのミドルシニアの告白に衝撃を受ける。