腕がパンパンになるモップがけ

 筆者は医療スタッフのバックヤードの清掃を命じられた。

 院長室、ドクターの宿直室、ナースの宿直室、栄養士の控室、ナースの更衣室、介護士の更衣室、医局。医療スタッフが出勤する前に部屋の床にすべて掃除機をかけ、モップがけし、ゴミ捨てを行う。

 モップがけは重労働だった。濡らしたモップなので床の滑りが重たい。それも「∞(むげん)」を描きながらモップを左右に動かすように教えられたので、二の腕に力が入る。

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 床の染みを落とすのは、ちょっとした筋トレだ。これをシニアがやっているというから驚きである。

 75歳のカズオさん(仮名)はスイスイとやっていた。痩せた体に、ジャンパーをはおり、頭にバンダナを巻いている。聞くと、もう10年勤めているという。すでに体が出来上がっているのだろう。

 朝の古ぼけた院内は暗く不気味で、テンションが下がる。きつい、汚い、安い、暗い。この環境では、若い人は来ないだろう。

「無限」に思える10メートルほどの廊下にモップをかけたら、腕がパンパンになった。ずっと下を向いていたので、首もカチコチだ。これまでにいくつかの肉体労働を体験してきたが、これはハードな部類に入る。

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