加圧トレーニングを続け、スタイルを保つため1日1食の努力家

 超高齢化社会を迎えた今、「時代を映し出すもう一つの鏡」でもあるAVに「介護もの」が増えているのは頷ける。そして、業界にはほとんどいない「シニア男優」の銀次さんには、今も仕事が絶えないという。

 銀次さんは今も、月の半分は撮影が入っている。撮影が行われるスタジオは、都内もあるし、郊外もある。移動は自家用車。朝は9時くらいから撮影を開始して、終わるのはだいたい深夜だ。

 現場に入ると、まずはバスローブに着替え、髭をそる。女優さんのメイクを待ちながら、スタッフと世間話をしてコーヒーを飲む。

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 体力を保つ秘訣は、加圧トレーニングを続けること。スタイルを保つために、1日1食しか食べない。「努力しているところを見せたくない」という昔気質だが、しっかり努力している。こまめに日焼けサロンに通い、ほどよい色黒を保つのは、女優さんの体をキレイに見せるためだ。

還暦祝いにファンから送られたTシャツを着る佐川銀次さん(写真提供=本人)

「カッコつけない自分」には、巡り会えなかったけれど

 この世界に入ったのは26歳の時。当時はロックバンドでデビューを目指し、バイト生活をしていた。

「たまたまバイト先の人に『ドラマの仕事があるからやらないか』と誘われて。ところがよくよく聞いたら、実はアダルトで」

 当然、銀次さんは面食らう。「AV男優なんて男として最低の仕事だ」と思っていたからだ。しかし、引っかかるものがあった。

「バンドでオレはボーカルだったんだけど、芽が出ず行き詰まっていた。どうしたら売れるんだろうと悩んでいた時、自分をカッコよく見せようとするのがよくないんじゃないかと考えた。本当にカッコいい人は、カッコつけてない。AVに出れば、自分をさらけ出して、カッコつける自分から卒業できるんじゃないかと思った」

 しかしAVに出演しても、望むような「カッコつけない自分」には、巡り会えなかった。

 その代わり、銀次さんは業界人の仕事ぶりに、心を動かされる。