女将さんに店の将来についてたずねると…
食べ終わって女将さんに店の将来について教えてほしいとお願いした。すると、意外とあっけらかんとした面持ちで「そうなのよ、皆さん(常連さん)、あと5年でおしまいになりますよ。今のうちですよ。もっと食べに来て下さいね」と威勢のよいセリフが返ってきた。常連さん達も「そうそう」とうなずいている。
女将さんは5年後には80代。立ち退き反対運動もあり、もし10年後に閉店なら80代後半になる。
「そんな年齢まではできない」だろうし、貞男さんも「今年で40年、あと5年で45年。厳しい仕事だし、いい引き時かな」と考えているようだ。
再開発地域の周辺には…
一旦店を離れ、タワーマンションができる予定の地区をみにいってみた。しばらく南下すると「鰻割烹あら井」があった。
その先にはコロッケやメンチがうまい「堀田牛肉店」。こうした店も再開発で移転などを余儀なくされているのだろう。なんとなく悲しい気分だ。
再開発地区をぐるっと一周すると、すでに道路予定地は更地になっていた。
デベロッパーの意気込みが感じ取れる。
「あら、今週ははじめてじゃないの。何してたの?」
30分後、もう一度店に戻って「かき揚げ細うどん」を食べることにした。細うどんもなかなかつゆにマッチしていてうまい。からだが温まる。
店内には常連さんが次々にやってくる。女将さんのトークはこんな感じだ。
「あら、今週ははじめてじゃないの。何してたの?」(ミニカレーセット大盛を食べていた若い女性に)
「肉ねぎそばにカレーかけたひと、あなたがはじめてよ。値段いくらか決めてね」(立ち食いそばの達人の中年男性に)
「いつもカレーそばだけど、今日はカレーライスなの?」(常連の御夫婦に)
「カレーテイクアウトはルーだけ? ライスも? カレー好きよね」(常連のご婦人に)
常連さん達はそんな会話を楽しんで、三々五々店を後にする。そしてまた常連さんがやってくる。本当に愛されている店だと思う。店名の通り、常連さん達はもはやファミリー(家族)の一員になっているようだ。




