再開発で消えゆくそば屋
千歳烏山の南側は道路が複雑で、農道がそのまま車道や通路になったような状態だ。再開発は仕方ない。しかし、どんなに入り組んだ路地だろうと人は街並みとともに年齢を重ね、その風景や日常の味を記憶に刻んでいく。だから、ダムに消えた街並みみたいに、活気があった商店街が記憶の中だけになってしまうことはとても切ない。
立ち食いそば屋は再開発にはとても弱い存在である。JR常磐線金町駅南口の再開発で消えていった「そばっ子」は地域に根ざした名店だった。自分が立ち食いそば屋について記しているのはそういう記憶をできるだけ残していきたいと思うからである。どうかデベロッパーは既存の店が存続するように配慮してほしいと願う。千歳烏山には北側に「深大寺門前そば」、南側に「立喰そば・うどんファミリー」という二大大衆そば屋がある。この2つがセットになっていることが、いまの町の重要な魅力の1つなのだ。
「立喰そば・うどんファミリー」には老若男女、近隣のあらゆる人達がやってきては、味と女将さんとの会話を楽しんでいるという。とても素敵なことである。常連さんの中には小説家や音楽家、芸術家も少なくない。アーティストの皆さんは、是非ともこの店への想いを、エッセイや音楽・絵画に表現して残してほしいと思う。
「また来ますね」と女将さんに告げて店を後にした。そして「堀田牛肉店」でメンチ2個、コロッケ2個を買って帰路についた。こちらも最高の味であった。
INFORMATION
「立喰そば・うどんファミリー」
住所 東京都世田谷区南烏山5-11-7
営業時間 10:45~20:00(月、火、木~日)
定休日:水