三菱UFJ銀行の次期頭取は、“本命”とされた髙瀬英明氏を、コーポレートバンキング部門長の大澤和明氏が追い上げているという。一体、なぜ——。
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次期「トップ4」の布陣は
三菱UFJ銀行の頭取任期は4年が不文律とされてきた。貸金庫事件の影響で半沢淳一氏の任期は5年目に突入しており、来春の交代は既定路線とされる。
他方、MUFGの亀澤宏規社長は来春で就任から6年となることから会長に転じるとみられており、後任として半沢頭取の昇格が有力視されている。半沢氏は頭取就任以降、銀行の収益力回復に尽力し、その経営手腕には定評がある。就任直前の2021年3月期の銀行単体の当期純利益は1445億円だったが、2025年3月期には9591億円と、大きく立て直した。また、「若くして将来の社長候補と目されてきた半沢氏は金融庁、財務省と太いパイプを持つ。とくに今年7月に金融庁長官に就任した伊藤豊氏(1989年、旧大蔵省)とは昵懇の間柄」(メガバンク幹部)とされる。
ただ、2020年に亀澤氏がMUFG社長に就任した際、バトンを渡した三毛兼承会長は記者会見で「銀行頭取の経験がMUFGという総合金融グループを牽引していく上で必ずしも必要だとは考えていない」と述べている。この点について、社内では、社長と頭取は「使う筋肉が違う」と表現される。「持株会社の社長になれば、海外IR(投資家説明会)などの場面も多くなる。英語が必ずしも堪能ではない半沢氏にとって課題として残る」(関係者)との意見も聞かれる。亀澤氏以降、銀行の頭取経験者でなければMUFG社長になれないという慣行はすでに崩れており、すんなりと半沢氏が持株会社の社長に就くかは予断を許さない。
半沢頭取の後任には、取締役専務執行役員でグループCSOの髙瀬英明氏か、取締役専務執行役員でコーポレートバンキング部門長を務める大澤正和氏のいずれかが昇格すると見られている。1991年に三菱銀行に入行した二人。髙瀬氏は溜池支店に、大澤氏は虎ノ門支店に配属され、バンカーとしての第一歩を踏み出した。お互い、順調に出世の階段を上り、2017年6月には同時に、銀行とMUFG両方の執行役員に就任。経営企画部部長や国際企画部長など経営の枢要を担ってきた。
