リーダーには、さまざまなメンバーとよい関係を築くことが求められる。スターバックスコーヒージャパンやザ・ボディショップのトップを歴任してきた岩田松雄さんは「カリスマ性がなければ務まらないと思われがちだが、リーダーに特別な才能は不要だ」という――。
※本稿は、岩田松雄『新版「ついていきたい」と思われるリーダーになる51の考え方』(サンマーク出版)の一部を再編集したものです。
「お話があります。夕方、お時間をください」
組織のリーダーになったとき、難しい部下を持って苦しむこともあると思います。例えば、社会人としての基礎がまだできていない新入社員を持つ場合もそのひとつ、といえるかもしれません。日産自動車時代にひとつのエピソードがあります。
私は入社10年目、33歳のときでした。部下に大卒の女性を二人持つことになりました。部署に配属になって、まだ右も左もわからない。そんな中で、私が初めて命じたのは、接客後の灰皿の片づけでした。
後で一人の部下から「岩田さん、お話があるのですが、夕方、お時間をください」と言われました。就業時間後、彼女から「今日片づけを私に頼んだのは、私が女性だからですか?」と怖い顔で聞かれたのです。
もちろん、女性だから頼んだのではありません。私は、真正面からきちんと向き合って、時間をかけて、なぜその仕事をお願いしたのかを伝えました。
新入社員には「時給」で説明する
雑用をお願いしたのは、若いからとか、女性だからというわけではまったくない。ただ、あなたの給料はおそらく、新人だから部内では最も安いと思う。
灰皿の片づけやコピーなどはもちろん私が自分でもできるけれど、時給の高い私がするのではなく、まだ時給の安いあなたがそれをかわりにしてくれれば、私は給料に見合ったもっと付加価値の高い仕事ができる、と。
こんなふうに説明すると、彼女は納得をしてくれました。一年も経たないうちに、見違えるように変わり、「申し訳ないけど、コピー……」と言い終わらないうちに二人とも立ち上がるようになりました。率先して自分たちにできる仕事をやってくれるようになったのです。
