もうひとつは、相手の長所を認めることです。例えば専門的な業務に詳しい、消費者に近い目を持っている、ライバル社をよく知っている……。
部下と競うのではなく、そうした長所を認めて積極的に話を聞いてみる。そして、その部下に足りていない視点で意識的に発言する。その部下にはないものを持っていることに、気づいてもらうということです。
自分の経験を振り返ってみても、第一印象だけで勝手にこの人とは合わないな、と決めつけていた人が、実は考え方がとても似ていて、後に同志のような関係になったということもあります。
大切なのは、先入観を持たずにコミュニケーションを取ることです。
必要なときは、人事権をしっかり行使する
ただ、そこまでしてもどうしてもうまくいかなかったり、あるいは相手が反抗的な態度を見せたりするというときには、私は上司の立場と役割を気づかせたほうがいいと思います。端的にいえば、自分はあなたを評価し、査定する立場にあるのだ、ということです。
意思疎通をしようと努力した結果、どうしても変化がない場合は、別のチャンスを見出(みいだ)してもらうしかないと思います。社内異動なのか、社外なのか……。
ただ、闇討ち的な人事は絶対にしてはいけません。必ず本人にフィードバックをした上で、改善のない場合に限り人事権を行使すべきです。
また、上司と部下の関係は、あくまでも仕事上のものです。別に仲良しクラブを作る必要はないのです。お互いにきちんと役割をこなせば良しとする、ビジネスライクな付き合いをすることも大切です。
上司とうまくいかない場合は
一方で、自分の上司とうまくいかない、という悩みも組織ではよくあります。
これは、部下の場合と同じようにこちらから歩み寄っていくことがもちろん大切になりますが、部下以上にやっかいといえます。
私自身にも経験があります。そのせいで数カ月、ノイローゼ寸前になったくらいですから。しかし、日本企業の場合は、平均四、五年でどちらかは異動します。人間、終わりが見えないと耐えられないものですが、数年経てば必ずどちらかが人事異動になると思って、堪え忍ぶ。それが一番良い方法かもしれません。