新日の若手にイケメンが増えている
博士 師匠と呼ばれる人が、どう間をもたせるかという世界、芸能も一緒です。間という意味で、60分フルタイムを何度も戦っている長州さんの話をオレが理解した感じで言うと、60分を戦いぬく戦術とスタミナを練習のときから体感していて、さらに観客の前で自分のペースでできるかどうかがポイントだと。
棚橋 30分でも60分でも、その時間の感覚をまず体にしみこませないといけない。60分1本勝負なら、最悪でも60分動けるだけの体力は計算しておかないと。とにかくオカダ(・カズチカ)の体力はすごいなと思います。僕は経験がないので、60分超えは未知のゾーンです。
博士 60分を超えていくと、見ているほうも違うゾーンに飛ばされるような感覚ありますね。そういう観客を巻き込んだ高揚感を生み出せるのは、新日のレスラーの方たちの努力のたまものだと思います。さらに最近、新日は企業として業績の素晴らしさもニュースになってます。入門希望者は、どのように採ってるんですか?
棚橋 以前は寮に空きがあるとか、付き人が足りないとか、タイミングと運もありましたが、今は入門テストは毎年年末にやってます。会社が苦しくても、ヤングライオンこそが将来のスターになっていく、会社を支えていく若手選手は毎年採り続けていかないといけない。
ユリオカ 最近はイケメンも多いと聞きましたけど。
棚橋 ええ。若い芽は摘まないといけない。
ユリオカ 将来のスターを、なに、摘もうとしてるんですか。
棚橋 すごくかっこいいんですよ、今の若手。雑用でセコンドに初めて付いただけで、かっこいい練習生がいるって話題になるぐらい。
博士 「ミスター自分自身かっこいい」棚橋さんからしてみたら脅威ですよね。
棚橋 かっこいいのカテゴリーは、僕だけのものにしておきたいです(笑)。
プロレス史上あんなに嫌われた人はいない
ユリオカ 2006、7年ごろの棚橋選手、本当にかっこよかったのに、プロレス史上あんなに嫌われた人もいないですよ。ブーイングが4年ぐらい続きましたからね。その理由が「なんかあいつ気に入らない」っていう。
博士 チャラいとかね。
ユリオカ そう。真面目に戦っているのに、要するに、新日っぽくないっていうだけで嫌われていた。でも、その時代があるから、今のファンの信頼度が高いんじゃないかと。
棚橋 嫌われたぶんだけ急に好かれる、ハネるみたいなのはありますよね。内藤(哲也)もそうですね。
ユリオカ ブーイングがあって大ケガでふさぎこんで、それを乗り越えて、人生の春夏秋冬を見せるのがプロレスだといいますよね。そのうえ、棚橋選手は疲れたことがないんですよね。
棚橋 疲れたことはないです。
「レスラーの脂が乗るのは50から」
ユリオカ 以前オカダ選手がロックアップで組み合った瞬間、お客さんから見えないときに、棚橋さんぐったりした顔してるって言ってましたよ。でも、疲れてないんですよね。これからも疲れてないって、言うことにしますもんね。
棚橋 ことにってなんですか(笑)。疲れたときは死ぬときだと思ってます。
ユリオカ その持続力というか、継続力が棚橋選手の魅力なんでしょうけど。
博士 棚橋さんの本のポジティブワード「自己肯定という魔法」は、オレ自身にもすごく効果があります。でも、年齢的に42歳、後厄とかいろいろあるじゃないですか。
棚橋 いえ、全盛期はこれからなんですよ。『週プロ』の対談で、藤原(喜明)組長に「レスラーの脂が乗るのは50から」って言われてますから。
博士 落語家と一緒だ。何歳までやりたいですか?
棚橋 まだ全然決めてないですけど。かっこいい言いかたをすると、チャンピオンベルトを目指さなくなったら引退かなと思いますね。
(会場からまばらな歓声……)
ユリオカ かっこよさ……あまり伝わらなかったですね。もう1回言っときますか?
棚橋 大丈夫です。もう1回言ったら事故りますんで(笑)。
ユリオカ でも、正直なところ、ファンとしてはいつまででもやってほしいんですよね。その年齢に合ったプロレスというのがあるんで。昔、棚橋選手はアンダー30と言われてましたけど、今度は50代以上みたいなベルトを作れば。
棚橋 それだ。オーバー50。
博士 プロレスレジェンドがみんな参加してきますよ。プロレスのチャンピオンベルトって、プロレスラーと観客が一緒に大きくしていく、グレードを高めていくものですしね。やっぱりアイデアでしょう。プロレスの未来像っていうのは、レスラー個々が広げる世界観に観客が反応してくれるかどうかっていうことですもんね。
棚橋 今、棚橋がチャンピオンになったら新日本プロレスはどうなっていくかっていうところをイメージさせることができないとダメですね。