「(台湾有事は)存立危機事態になりうる」という11月7日の高市早苗首相の国会答弁に中国は猛反発し、発言の撤回を求めている。

 11月10日放送の米FOXニュースのインタビューで、この問題について質問されたトランプ大統領は、中国批判をせず、習近平主席とは「うまくやっている」と答えている。

 さらに朝日新聞の報道(11月27日付)によると、習氏との電話協議(11月24日)の後に行われた11月25日の日米首脳の電話協議で、トランプ氏から「中国が反発を強める中で、事態を沈静化させていかなければならない」という認識が示され、高市首相の国会答弁を支持する発言もとくになかったという。

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 1972年のニクソン大統領の電撃訪中でも日本は煮え湯を飲まされたが、今回も米国は日本の頭越しに米中関係を優先するのではないか。もしそれが事実なら、中国の軍事的脅威に対する安全保障を米国に全面的に頼っている日本の方針は根本から見直しが迫られる。

安倍元首相が唱えた「核共有」は有効な選択肢なのか?

 高市首相は、「持ち込ませず」が「米国の核の傘」による抑止力を低下させかねないとして、「非核三原則の見直し」を持論としているが、これで十分なのか。そもそも「米国の核の傘」は機能するのか。かつて安倍晋三元首相が唱えた「核共有」は有効な選択肢になり得るのか。

北朝鮮の核ミサイル ©時事通信社

 安全保障問題が専門の慶應義塾大学教授の神保謙氏はこう指摘する。

〈地政学的な逆説として、大国間の関係が安定すればするほど、地域レベルでは安全保障環境が不安定になる側面はあります〉

神保氏 ©文藝春秋

 財政の観点から防衛問題を研究する法政大学教授の小黒一正氏もこう危惧する。

〈先の米中首脳会談でも、レアアース問題で急所を突かれた米国は、台湾問題を持ち出せませんでした。私が最も懸念するのは、南シナ海の管理を含め、米中が“手打ち”をするケースです。その場合、日本は自分の身をどう守ればいいのか。台湾が置かれている状況は、日本にとっても他人事ではなく、米中が手を握るという最悪のシナリオも想定しておかなければならない〉

小黒氏 ©文藝春秋