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検察側の立証ハードルは相当高い
実は、発生2年後にDNA鑑定結果が出てから逮捕までに7年を要している。
「京都府警はすぐにでも着手したかったが、事件の背景や動機、それに指示役が不明のままでは公判維持が難しいとして、検察がなかなか首を縦に振らなかった。最終的には最高検や警察庁を含めて協議し、ようやくGOサインが出たのが22年だった」(捜査幹部)
工藤会を長年捜査してきた福岡県警との連携不足も捜査を難航させたという。
「京都府警は現場の鑑識など地道な捜査で田中に辿り着いたが、工藤会に話を聞けるルートは脆弱で組織的関与を裏付けられなかった。最終的には合同捜査本部が設置されたが、福岡県警の捜査員からは『情報が共有されない。京都が勝手にやっているだけだ』との声が出るなどギクシャクしていた」(別の捜査関係者)
近年は「疑わしきは被告人の利益に」の原則が徹底され、被告がたとえ暴力団員であっても無罪判決が出るケースが少なくない。19年の銃撃事件で殺人未遂の罪に問われた山健組組長にも昨年、神戸地裁で無罪が言い渡され、関係者を驚かせた。
「何が無罪や、工藤会が何やねん。うちの大切なお父ちゃんを殺したんや!」
罪状認否の後、遺族女性の悲痛な叫びが廷内に響き渡った。検察側の立証ハードルは相当高いとされ、来年10月の判決が注目される。


