モデルになって「初めてものにジェラシーを感じました」

――そこで「JJ」の専属モデルに決まるのが加藤さんの凄さですよね。

加藤 当時は雑誌モデルからテレビの世界にいくことはあっても、テレビから雑誌モデルというパターンはあまりなかったんです。なので、その時の「JJ」の編集長が「面白いんじゃない?」っていうので決まりました。

――ただ、当初はちょっと浮いていたそうですね。

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加藤 最初は先輩モデルさんからも「なんでテレビからこっちの世界に来るの?」と言われて。それで「洋服を勉強したいんです」と答えたら「確かに私服、めちゃくちゃダサいよね」となってすごい可愛がってもらったんですよ。新しいアイテムとかファッションの歴史とかを教えてくれて。「メモりなさい」と言われるので、モデルの先輩は座って、私は立ってメモを取ってました(笑)。

「JJ」専属モデルを務めていた頃の加藤夏希さん ©時事通信社

――役者として写真を撮られるのとは違う、ファッションモデルとしての難しさにもぶつかったそうですね。

加藤 今まで写真を撮るとなったら自分がメインなんですよ。でも突然ファッションの世界に行ったら洋服がメインで「カメラ目線はいらないです」ということも多くて「ええ?」となって。靴の特集だと脚だけ、鞄の特集だと手しか使われなかったり。「いや映ってない、私」と、初めて人じゃないものにジェラシーを感じましたね(笑)。

――私を見て! というタイプだったんですね。

加藤 いかに自分中心で生きていたいのかと、モデルになって初めて気づきました(笑)。私は注目されるのが好きなんだって。

©山元茂樹/文藝春秋

仕事でアニメやゲームの話をすると…

――「JJ」モデルになった頃にはテレビドラマやバラエティー番組への出演も増えて、お茶の間での知名度も上がっていきました。

加藤 気持ち的にも、それまでのような「部活の延長線上」から、ちゃんと仕事という認識で日々現場に向かうようになりましたね。

――2000年代初頭だと、アニメやゲームがだんだん普通の趣味として認知されている段階ですよね。当時はまだ、“迫害”されていましたか。

加藤 “迫害”はされてましたね。仕事でアニメやゲームの話をすると「今シーズンのおすすめのコスメのカラーとかモデルらしいお話をしてください」と言われていました。

 ハワイで開催されたファッションショーに出演したことがあって、現地のメディアの取材も受けるんですけど「ハワイでどこか買い物に行きましたか?」と聞かれて「ホテルでずっとゲームをしてました。外に出ると電波の回線が悪いので」と答えたら「その発言はやめてください」と怒られました(笑)。キャラクターコラボのファッションアイテムも出ていたりはするんですけど、当時は基本ファッションとアニメやゲームはもう全然別次元だったので。

 ただ私の中ではOLさんがファッション誌を買って「このモデルさんが着ている洋服を買おう」というのもコスプレなんじゃないの? と思っていました。なので、やっていることは一緒なのに、なんでアニメやコスプレは差別するんだろうとずっと疑問でした。