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少しでも痛みを和らげることはできないものか
父が亡くなるまでの間に、本人も希望したので年末に2週間ほど実家に戻ったことがある。
2階にある本来の書斎兼寝室は不便も多く、1階の居間を片してベッドと机を用意した。
介護士やお手伝いさんが正月休みを取るまで家に居て、その後施設に戻ったが、思うところがあったのだろうか、以後は一切家に戻りたいとは言わなかった。
在宅中に一度、父が騒いで収まらないので夜中に呼び出されたことがあった。お腹が張って仕方ないのでどうしても浣腸をして欲しいと言うのだが、宿直してくれていたのは介護士だったので看護師の資格がないと出来ないという。どうしても収まらないので私が指名されて息子の責任のもと用を施した。
私は父親の体内に指を入れながら何とも言えない悲しさを味わっていた。父は想像できないような苦しみの中にいる、やはり確実に死に向かっているのだ、少しでも痛みを和らげることはできないものか、と思ったものだ。
母は施設にいて日常のストレスから解放されて元気ではあったが、体力は確実に落ちていて、移動はほぼ車椅子になっていた。父の病気のことは上の兄たちが伝えたと思う。やはり父と会いたが別の施設に居て離れ離れになっていた母が父を訪ねたり、何度か父の施設や実家で逢瀬の時間を作った。
