夜ドラ『ひらやすみ』(NHK総合)が12月4日に最終回を迎えた。世界累計110万部突破という記録を持ち、国内外、老若男女問わず幅広い世代から愛されている真造圭伍の人気コミック『ひらやすみ』(小学館)の実写化作品として、放送開始前から話題を呼んでいた本作であるが、回を重ねるにつれて多くの視聴者の共感を得ていった。

 1話15分、全20話という限られた放送時間だったために、早すぎる最終回を惜しむ声も多い。「考察ブーム」の反対をいく「何も変わらない」主人公の日常を淡々と描いているにもかかわらず、「できることならずっと見続けていたい」と思わせる本作の魅力とは何か。ヒットの理由を探ってみたい。

岡山天音(『ひらやすみ』公式Instagramより)

「人柄の良さ」が取り柄の主人公

『ひらやすみ』は、近所のおばあちゃん・和田はなえ(根岸季衣)から阿佐ヶ谷の一戸建てを譲り受けて住み始めた29歳の主人公・生田ヒロト(岡山天音)と、美大入学のため上京した18歳のいとこ・小林なつみ(森七菜)の「平屋暮らし」を中心に、彼らの周りの人々の日常を描いた作品だ。

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 脚本を担当したのは『ウマ娘 プリティーダービー』や『スキップとローファー』などアニメーション作品を多く手掛ける米内山陽子。ドラマ『団地のふたり』(NHK BS)、『かしましめし』(テレビ東京系)、『フェンス』(WOWOW)の松本佳奈、映画『マイスモールランド』の川和田恵真、髙土浩二が演出を務めている。

 主人公・生田ヒロトを演じるのは、大河ドラマ『べらぼう』(NHK総合)の恋川春町役が記憶に新しい岡山天音。ドラマ『アンメット ある脳外科医の日記』(カンテレ・フジテレビ系)や『ライオンの隠れ家』(TBS系)、映画では『#真相をお話しします』『Cloud クラウド』など最近出演した作品を羅列するだけでも、その良質な仕事ぶりを思い起こすことができる。

 本作においても、人柄のよさだけで一戸建ての平屋を譲り受けてしまう主人公という、現実にはなかなかいないキャラクターではあるものの、彼自身が持つ柔らかな佇まいとそこはかとない陰影が加わることでより説得力が増している。

 さらに、小林なつみを演じる森七菜にも驚かされた。天才肌ではあるが不器用で、第2話の小林聡美によるナレーションによると「自意識過剰」気味な彼女の抱える「世界と自分との間のズレ」のようなものを、独特な身体の動きと台詞回しを通して、森は見事に体現して見せた。