この社会起業家としての日々は充実していたものの、自分の得意分野や考え方に囚われすぎずに一度棚卸し、新たな切り口から自らの歩みを再構築するためのヒントを得たいとも切望するようになっていた。そんな折、アメリカ留学の機会を得て、進学先を探す中で見つけたのがDesignだった。当時は漠然とした理解しかなかったものの、これまでとは違う新たな発想の道筋を見つけることができるかもしれない予感に胸が躍った。

 ハーバード大学Graduate School of Design(以下GSD)に進み、修士はリスク&レジリエンスを専攻した。気候変動や難民問題などの社会課題を空間的に扱う人が多く、課題の本質を見出し、問いを立てた先に新たな可能性を導くことに挑戦し続ける日々が始まった。

 なお、Designとひと口に言っても、何を使い社会課題にアプローチするかという点においては、海外でも各大学ごとに特色がある。GSDは“建築系”とも言われ、建築・景観・都市を起点とする。他にも、工学やイノベーション、デザイン思考の教育から発展したスタンフォード大学のd.schoolやイリノイ工科大学など、その切り口は様々だ。

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「Design」が教えてくれたもの

 今の私は、Designを、世界を捉えるフレームを構築する思考法であり、世界と自分を見つめ、自ら問いを立てて解決方法を探り、周りを巻き込みながら、変化を紡いでいく、実践そのものだと考えている。

 Designは私に、ものの見方や空間や時間の捉え方はひとつではなく、様々なあり方に寄り添いつつも相対的で批評的なまなざしも大切にする姿勢を教えてくれた。気づきを形にして共有することで対話のきっかけを作る術も身につけた。だから、GSDの修士論文では、アメリカで出会ったブータン難民の人々の暮らしの音を集め、公共空間で鳴らすことで再文脈化をし、多様性を謳いつつも実は分断している都市の在り方について問題提起した。