「シュアムにネパール人の奥さんがいることは、みんな知っていたと思うよ。知らなかったのは、智江さんだけじゃないかな」

 工房の同僚によれば、シュアムの妻は毎日工房に来て働いているという。シュアムの逮捕により、自ら生活費を稼いでいるというのだ。

 工房を訪ねてみると、広さは畳二畳分、高さは160センチほど、工房というよりは物置き小屋と呼んだほうがしっくりくる。銀細工をするための工具が所狭しと置かれていた。

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 シュアムの事件のことで日本から取材に来たと告げ、「ここにシュアムの奥さんはいますか」と尋ねた。すると、手前で作業をしていた男が、黒いサリーと呼ばれる民族衣装を着た女性を指差した。

ネパールに住む妻

「あなたはシュアムの奥さんですか」とあらためて直接その女性に聞いた。すると彼女はすぐに、「はい」と返事をした。事件を知っているかと尋ねると、「知っている」と頷いた。

 彼女は14歳のときにシュアムと結婚し、6歳になる娘もいると言った。工房では話しづらいこともあり、後日、彼女が暮らしているアパートを訪ねて話を聞くことにした。

 彼女は、木製のベッドと煮炊きをするコンロだけが置かれた、四畳ほどの部屋に娘と2人で暮らしていた。カーテンを買う金もないのだろう。強い日差しを避けるために、窓には新聞紙が貼ってある。生活ぶりからは貧しさが滲み出ていた。

 彼女の名前はビマラ、年齢は23歳。智江さんに会ったことがあるかと尋ねた。

「彼女については1回見かけたことがあったけど、話したこともありません。夫が工房に彼女を連れてきたとき、私も工房にいました。すると夫はすぐに彼女を連れて出ていってしまったんです」

 その後、シュアムは智江さんとネパールで結婚の手続きをして日本に向かったのだが、その経緯を彼女は知っていたのだろうか。