人口約50万人を擁する千葉県内有数の文教都市、市川市。ここで2022年から市長を務めるのが、田中甲氏(68)だ。
だが、田中氏に市長の座をもたらした市川市長選に今、重大な疑義が突き付けられている――。
2022年3月27日に投開票が行われた市川市長選。地元記者が当時を振り返る。
「公用車にテスラ社製の高級電気自動車を導入したり、市長室にガラス張りのシャワー室を設置したりと、何かと世間を騒がせた前市長・村越祐民氏の任期満了に伴う選挙でした。立候補者は同市長選では過去最多の6人。混戦の結果、元衆院議員の田中氏が初当選を果たしました」
市川市出身で、市川市議として政界に踏み出した田中氏。1993年、旧千葉4区(現5区)で新党さきがけから衆院選に出馬し、衆院議員に初当選した。その後、3期を務めたが、2003年に落選後は、みんなの党や日本維新の会から衆院選に出馬するも敗戦続き。2017年からは市川市長選に挑戦の場を移したが、村越氏に敗北。そして2022年、満を持しての市長選初当選となったのだ。
この市長選には、不可解な候補者が名を連ねていたという。
「表立った選挙運動を全く行わない女性候補がいたのです」(同前)
彼女の名前は、市川まみ。選挙公報によると、市川氏は介護と子育てを両立させる派遣社員だという。選挙戦では得票数4867票で最下位という結果に。供託金の100万円も没収され、人々の記憶から消え去った。
しかし――。今回、「週刊文春」に寄せられたのは、市川氏の出馬の背景を知る人物の爆弾証言だ。
「じつは市川まみは、田中氏の選対が創り上げた“ダミー候補”でした。選挙期間中に市川まみを演じていたのは、私です」
意を決した表情でそう打ち明けるのは、田中氏の元秘書である。
別の女性候補を“ダミー”として擁立
取材の中で明らかになったのは、市長選当選を目指す田中氏がライバル視していた女性対立候補の票を少しでも減らすため、別の女性候補を“ダミー”として擁立しようとしていたこと。そして、田中氏が約2200万円もの金額を、この“ダミー候補作戦”に投じ、その中から元秘書をはじめ関係者へ謝礼が支払われていた事実だった。
元テレビ朝日法務部長の西脇亨輔弁護士の指摘。
「公選法では、『特定の候補者を当選または落選させる目的で、有権者や選挙運動員に金銭を渡す』行為が買収として禁止されており、今回のケースは、買収罪に当たる可能性があります。選挙から3年以上経過しており、すでに時効とはいえ、政治家としての説明責任は免れないでしょう」
田中氏に取材を申し込むと、本人からメールで次のような回答があった。
「私から市川まみ候補に対し、直接・間接を問わず、出馬を依頼したり、選挙運動に関する指示を行った事実はございません。市川候補とは面識もなく、ご質問のような『二馬力選挙』を目的とした資金提供を行ったこともございません」
現在配信中の「週刊文春 電子版」では、元秘書が実名顔出しで語った”実行役”としての活動内容に加え、“指示役”だった田中選対幹部のA氏、A氏と並ぶ側近の一人だったB氏が明かした田中氏の指示内容を詳報。田中氏が支払った2200万円の振り込み記録や領収書などについても公開している。

【元秘書が顔出し実名証言】田中甲・市川市長が「ダミー対立候補」を出馬させていた!《元秘書「私が対立候補を演じました」》《市長から選挙費用として2200万円支出、公選法違反の疑い》
週刊文春の注目記事
文藝春秋が提供する有料記事は「週刊文春電子版」「Yahoo!ニュース」「LINE NEWS」でお読みいただけます。
※アカウントの登録や購入についてのご質問は、各サイトのお問い合わせ窓口にご連絡ください。

