――精神的にも、現実的な生活の面でも、苦しい状況だったかと思います。

A氏 私と弟、二人きりになってしまいましたから。とにかく弟だけは高校に通わせなきゃいけないと、大学に通いながら働いて、毎朝二人の弁当を作って。そこではじめて、「人を育てるってこんなにお金がかかるんだ」「こんなに大変だったんだ」と痛感しました。また一方で、「弟には自分と同じような思いはさせたくない」という気持ちも強かったですね。

――自分が支えていくしかない、と。

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A氏 これまで母にしてもらっていたことを、今度は自分が弟や他の人たちにしていかなきゃいけないと思いましたね。

 目の前の現実は待ってくれませんから、とにかく自分が動いていくしかないんだと。でも自分がそうして動きつづけることで、誰かを支えたり、喜んでもらえたり、何かを変えられる面もあるんだとも考えるようになりました。

左手薬指には指輪が輝く

活動を続ける目的はどこに?

――見返りを求めない行動という点では、現在の活動とも通じるところがありそうです。

A氏 そうですね。自分が発信することで、参加者や主催者の方々に喜んでもらえたり。実際に投稿を見て「行ってみたい」「交流してみたい」とイベントに来てくれる方もいます。そういった出会いの場につながることが、何よりのやりがいになっていますね。

――実際に、SNSやイベントの場で交流しているのはどんな方々なのでしょう。

A氏 SNSを見てくれている方々はかなり幅広くて、小学生や中学生から、孫がいる世代の方もいます。メッセージも、小中学生から来ることもありますよ。親御さんからも、「親子で楽しんでいます」とか、「ステッカー欲しいです」とか。

 実際に、コメントをくれたご家族とイベントで会って、お子さんと遊んだりすることもありますね。

イベント会場でひときわ目立つ匿名集団の幟

――そうした体験がきっかけで、将来その子が車好きになったら嬉しいでしょうね。

A氏 そうですね。車離れといわれる時代ですから、まずはそもそも車をもってくれたらいいなと。そこからさらに車を趣味にしてくれたり、自分たちの考え方を発信してくれたり、そういった形で楽しんでもらえたら願ったり叶ったりですね。

――匿名集団としての活動を続ける意義も、そういったところにあるのでしょうか。

A氏 やはり自分の映像を通じて、一人でも多くの人が車に興味をもってくれたらいいなとは常々思っています。

 あとは自分の映像を見て、普段笑えない人や、感情をあまり表に出せずにいる人たちが少しでも心を動かしてくれたら、私がこういう活動をしている意味もあるのかな、と。

 言葉にしちゃうと、ありきたりですけどね。

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