令和の改造車チームとして、一部界隈で絶大な支持を誇る匿名集団。なんとその正体は、「SNSでの発信」を活動の主軸とする若者たちだった。30万人以上のフォロワーを抱えるそのTikTokアカウントには、素人とは思えないほど巧みに編集された短尺動画が並ぶ。
しかし実際のところ、「オンライン」を軸とする改造車チームなどありうるのだろうか。「案件」を目的としたインフルエンサーが散見されるこの時代、匿名集団もやはり「収益目的の半玄人」のような存在なのでは?
彼らのSNS運用の実態について代表者に聞くと、意外な事実が浮かび上がってきた。
30万人のフォロワー、運用に「プロの手」は?
――匿名集団のSNSにアップされている映像を見ていると、画角やコマ割などから「プロっぽさ」を感じます。撮影や編集の作業は、どこかに委託しているんでしょうか。
匿名集団A氏(以下、A氏) いえ、SNSまわりはすべて私一人でやっています。1日のイベントで、大体300から350くらいの動画を撮りますね。
――一人で、ですか? お仕事が映像関係とか?
A氏 いや、仕事は普通のサラリーマンですよ。むしろ最初はSNSにも慣れていなくて、インスタを始めたのも5年前とかで。
――世代を考えると、かなり遅い方ですね。
A氏 そうなんですよ。そこから独学で、「どういう投稿なら見てもらえるのか」というのを考えて。
――独学で、ここまで?
A氏 ええ。SNSユーザーの行動特性を学びつつ、色んな映像を見ながら「ここはこうした方がいいんじゃ?」と自分なりに研究したり。
あと、意見のフィードバックはとくに大事にしています。周りの人たちに「あの動画がよかった」といわれたら、「どこがどうよかった?」と詳しくヒアリングしたりですね。
SNSを通じた収益はまさかの……
――ほぼ初心者の状態からフォロワー30万人という現状に至るまで、かなりの労力が必要だったと思います。正直なところ、やはり収益を目的にしている面もあるのでしょうか。
A氏 いえ、それが全然ないんですよ。
――まったく? 収益はゼロ、ということですか?
A氏 はい。TikTokでは1分以上の動画から収益化の対象となるのですが、私が作っているのは15秒とか20秒程度のものなので。
――それはなんだか、もったいないような……。
A氏 ほんとに、ただの趣味なんですよ。むしろお金が目的になってしまうと、制約も大きくなりますし、本当に作りたいものが作れなくなるでしょうし。

