“風呂キャンセル界隈”にも効果あり?
排水が始まると、注水の時と同様に水位がみるみる下がっていく。排水が完了したら「ゴーッ」という音とともに、強めの風が吹き出し、身体を乾かしてくれる。とはいえ、完全に乾くわけではない。タオルでの拭き取りは必要だ。
カバーが開き、外へ出てみると外気が冷たく感じる。冬場にサウナからそのまま外気浴を始めたような感覚に近い。それだけ体が温まっていたということか。慌ててタオルを羽織った。腕に触れると、体験前より肌がすべすべになった感覚がある。長袖のラッシュガードを着ていたのに、これが「微細な泡の力」なのかと納得した。
髪も整髪料がしっかり落ちており、シャンプーなしでここまで洗ってくれるとは思っていなかったので驚いた。15分で全身を満遍なく洗えて、しかも全自動。石鹸もシャンプーも不要となると、風呂に入るのが面倒という“風呂キャンセル界隈”の人や、1人での入浴が難しい人にとってかなり有効だろう。値段にはいったん目をつぶり、家にあるなら毎日でも使いたいと思える体験だった。
気になる価格は……
サイエンス社では、ミライ人間洗濯機を一般販売する予定はなかった。
ところが、万博で大きな話題を呼んだことで「展示されているミライ人間洗濯機が欲しい」という申し出を皮切りに「販売予定はないのか」「いくらなのか」「施設に導入したい」など、問い合わせが殺到。多くの声を受け、2025年8月に一般販売を決定した。
大阪・道頓堀クリスタルホテルⅢ、タカラレーベンの池袋サロンなどで導入が決定しているほか、風呂のあるホテルや旅館以外の業界からも「集客目的に設置したい」という問い合わせもあるという。受注生産制で、納期は受注から約3カ月だ。11月現在で国内8案件ほどが動いている。海外からは個人での問い合わせも来ており、順次対応する方針だ。
価格については「高級スポーツカーくらい」という表現にとどめており、販売目標は「最大でも50台程度。各都道府県に1台ずつ採用されていくイメージで考えている」と平江氏は説明する。希少性を保ちながら、全国どこかで体験できる状態を目指すスタンスだろう。
今後は簡易版の開発も視野に入れつつ、平江氏は「まずは自分たちが作ったものが世の中でどう受け入れられるか。そこから次の展開を見極めたい」と話す。1970年の万博から55年の時を経て、社会実装が実現した人間洗濯機。意外とすぐに「当たり前」になっていくのかもしれない。
記事内で紹介できなかった写真が多数ございます。次のページでぜひご覧ください。
次のページ 写真ページはこちら
