スパイ機関が収集する情報は、正確に大統領に伝えられる必要がある。国民から選挙で信任された大統領はそうした情報をもとに、国家のための政策や戦略を立てるからだ。選挙で選ばれたわけでもないスパイたちが、自分たちの判断で情報を操作することはあってはならない。このような不信感が積もりに積もって、報復につながったのだろう。
中国スパイが拡大中だが
26年以降、こうした報復の影響が如実に表れてくると考えられる。まず、米国内の治安悪化だ。トランプ自身は2度も暗殺未遂に遭っており、最近では、政治活動家のチャーリー・カーク氏が暗殺されるなど政治的テロ行為が先鋭化している。また、トランプ大統領は2020年にイラン革命防衛隊のカセム・ソレイマニ司令官を爆殺したことで、イラン政府幹部から暗殺対象に名指しされており、イラン人が起訴された例もある。本来の任務ではない不法移民対策にリソースを割かれる情報機関もあり、頭の痛いところだ。
スパイ対策も然りだ。中国やロシア、北朝鮮、イランなどからのスパイ行為が摘発されるケースが増えている。特に中国のスパイ行為はサイバー空間にも拡大しており、CIAも中国スパイ対策として中国情報の収集を重点的に行う「チャイナ・ミッションセンター」を立ち上げたり、FBIも「チャイナ・イニシアティブ」の取り組みを強化している。さらなる人員強化が必要な分野だが、全体の機動力不足によって、世界最強とされるCIAの優位性が揺らぐ可能性もある。
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このコラムは、政治、経済からスポーツや芸能まで、世の中の事象を幅広く網羅した『文藝春秋オピニオン 2026年の論点100』に掲載されています。


