一部の元高官らによるあからさまな反トランプ活動

 トランプ政権による圧力は現役世代にとどまらない。これまで自分に敵対的だった元長官など、元高官なども容赦なく標的にしているのだ。スパイ機関などで重要な役職にあった元高官らは、退職後も、政府の最高国家機密情報にアクセスできる「セキュリティ・クリアランス」を保持できる。それをウリにして民間企業のアドバイザーになり、多額の収入を得ているという実態がある。トランプ大統領はそこにも目をつけて、これまで自分に敵対的な活動をした元高官らからセキュリティ・クリアランスを剥奪した。

 もっとも、トランプ大統領のスパイ機関に対する不信感にも一理ある。というのも、一部の元高官らはトランプ大統領が大統領選で勝利することで安全保障が不確実性を増すと考え、あからさまな反トランプ活動を行ってきた。象徴的な例は、2020年の大統領選挙を前に、ジョー・バイデン大統領の次男であるハンター氏のノートパソコンに保存されていた電子メールや文書がリークされた件だ。バイデン氏が副大統領時代にその立場を利用して金銭的な利益を得ていたと指摘されたのだが、50人以上の元スパイ機関高官が連名で書簡を公開し、この話は、ロシアの偽情報工作の可能性が高いと指摘したのだ。

 ところが後の調査で、電子メールなどは本物であることが判明。トランプ大統領が彼らに対して、怒りを持ったのは想像に難くない。

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バイデン前大統領 ©時事通信社

「刺激しそうな情報は伝えない」CIAによる情報操作

 また、CIAも第一次政権のトランプ大統領を軽視していた。朝鮮半島担当の元諜報員は、筆者の取材にこう語った。

「トランプの動きが予測できなかったので、どの情報をホワイトハウスに上げるのか、かなり注意をしていた。機密情報を自身のSNSに投稿したこともあるし、中国の習近平国家主席との首脳会談の際でもアメリカの工作について暴露することもあったからだ。その中でもセンシティブだったのは北朝鮮関連。トランプ大統領が『北朝鮮を攻撃する』と言い出す可能性を心配して、彼を刺激しそうな情報は伝えないようにしていた」