アメリカ第一主義を掲げて、世界各国に「関税戦争」を仕掛けるなど、対立構図を作って自国の有利にすべく動いてきたドナルド・トランプ大統領の第2次政権。国内でも個人的な恨みによる対立構図が顕在化している。トランプ大統領が目の敵にしているのが、インテリジェンス機関だ。スパイ活動を行うCIA(中央情報局)や、捜査権や逮捕権をもつ法執行機関であり情報機関でもあるFBI(連邦捜査局)、通信や衛星などを傍受する国防総省傘下のスパイ機関のNSA(米国家安全保障局)などが対象となる。

トランプ大統領 ©時事通信社

CIAやFBIを「ディープ・ステート(影の政府)」だと非難

 トランプ大統領は、これらの組織内に自らを貶めようとする勢力があると度々主張してきた。そもそもトランプ大統領は、第1次政権から、CIAを軽視してきた。その理由はCIAが自分の粗探しをして、足を引っ張ろうとしている、と見ていたからだ。例えば、トランプ大統領が初当選した2016年の大統領選挙では、ロシアがトランプ大統領に有利になるようにオンラインなどで干渉したというスパイ機関の分析に激しく反発。その調査に関与したCIAやFBIを「ディープ・ステート(影の政府)」だと非難してきた。米政府内にいながらトランプ大統領を貶めようとしている勢力だとレッテルを貼ったのだ。

 さらにCIAやFBIなどが政治目的で「武器化」されてきたとも糾弾している。2024年の選挙戦でもアメリカに18あるスパイ機関などを指す「インテリジェンス・コミュニティ(IC)」全体が腐敗しており、関係者を一掃して刷新するという公約を掲げた。そして第二次政権になって、次々とそれを実行に移しているのである。

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 まずトランプ大統領は、選挙戦でロシア疑惑など自身に対する捜査に携わったCIAとFBI、そして連邦レベルの検察を抱える司法省などの長官を次々と解任した。代わりに熱烈なトランプ支持者を指名している。NSAの長官と副局長も、まとめて25年の4月に解任。さらにスパイ機関の再編と効率化という名目で、新規採用の削減のみならず、早期退職を組み合わせて、CIAの職員数を数千人規模で削減することが明らかになっている。