特に飲酒運転による自損事故は頻繁に起きている。なかでも危ないのは段差だ。ホイール径が小さいため、段差乗り上げが苦手で、転倒しやすい。電動キックのナンバープレートが常にベコベコなのもこれが理由だ。かつて50代会社役員の典型的な事故例があった。飲酒運転の電動キックボードで中央区勝どきの自宅マンションに帰宅。1階の駐車場で、車止めに衝突して転倒した。頭を強く打ち、搬送先の病院で死亡が確認された。
先述した警察庁交通局の文書によれば、こんな事故の予備軍が2割もいる。今後も飲酒事故が起き続けるのは必定だろう。
電動モビリティ業界の正念場
もちろん、これらのことをLUUP社は把握していないわけではない。同社による渋谷のキャンペーン大看板にはたしかに「飲酒運転禁止」のアイコンが描かれていた。しかし、そのような注意喚起で足りているかと問われれば、NOとしか言えない。そもそも原動機付なのに、無免許でも乗れることも問題ではあるが、電動キックに平気で酔っぱらって乗るという、メンタリティの改善こそが重要だろう。
LUUPは2025年「ユニバーサルカー」と称する3輪のシェアモビリティ「Unimo」をリリースした。免許返納後のお年寄りのラストワンマイルを意識したモビリティで、私はこれにはかなり注目している。
また、12月、忘年会シーズンには渋谷署と合同で「飲酒運転根絶キャンペーン」をスタートさせている。ユーザーに呼気チェックをさせてアルコールが検出されたらLUUP貸し出しを拒否する、という。
同社の岡井大輝社長は「このまま電動キックを世の悪役のままにしているつもりはない」と危機感を示している。はたしてうまくいくかどうか。キャンペーンの成否は未知数だが、しかし、やれることはやるべきだろう。時間はもうそんなに残されていない。電動モビリティ業界はまさに今が正念場だ。
◆このコラムは、政治、経済からスポーツや芸能まで、世の中の事象を幅広く網羅した『文藝春秋オピニオン 2026年の論点100』に掲載されています。



