国際的なアレルギー学会が有効性を否定
国際的なアレルギー学会も、以下のように診断におけるIgG抗体検査の有効性を否定しています。
・ヨーロッパアレルギー臨床免疫学会(EAACI)
〈食品特異的IgG4抗体の測定は食物アレルギーや不耐症を示すものではなく、生理的反応にすぎないため、診断ツールとして推奨されない〉
・カナダアレルギー臨床免疫学会(CSACI)
〈正常な成人・小児でも食品特異的IgG抗体が陽性になることは珍しくなく、この検査を不適切に用いることで誤った診断が増え、不必要な食事制限や生活の質低下を招く〉
「不必要な食事制限や生活の質低下を招く」とまで警告しているのです。もちろん日本アレルギー学会や日本小児アレルギー学会でも否定的な声明を出しています。
そうはいっても「ものは試し、受けてみよう」と思う方もいるかもしれません。しかし、多くのクリニックで3万~5万円もの料金がかかります。ものは試し……と受けられるような値段ではないのです。
平気で食べていた「エビ」「カニ」が陽性に……
もう一つ、代表的なアレルギー検査として「VIEW39」という39種類の即時型アレルギーの反応について調べる血液検査があります。即時型アレルギーとは、アレルゲンを摂取後すぐに症状が現れるタイプのアレルギーのこと。項目としては、ダニ、ハウスダスト、スギなどの吸入するタイプのアレルゲンのほか、卵、牛乳、小麦、大豆などの食物系アレルゲンも調べることができます。
この即時型アレルギー検査は、保険適用でもあり、ある程度の信頼性はあります。
特にダニやスギ・ヒノキといった吸入系のアレルゲンに対する検査の精度・信頼性は高い。また、即時型アレルギー検査の結果が陽性であり、その患者さんの症状や臨床所見とも矛盾しないようであれば、「舌下免疫療法」による根本治療も行えます。つまり「次につながる」検査でもあるのです。
しかし、一方で、食物アレルギーに関しての信頼性は劣ります。たとえ結果が陽性であっても、本当は食物アレルギーではないケースがしばしばある。「偽陽性」の可能性は50~60%ほどの高さです。
私の医院にも、アレルギー症状を相談しに来る患者さんが多くいます。
即時型アレルギー検査を受けた結果、これまで平気で食べていた「エビ」「カニ」の項目が「陽性」になり、「全く症状がないのに……。どうすればよいですか⁉」と戸惑っている方もいました。
陽性となった食品を実際に食べても、何かの症状が出るわけでもなく、臨床的には検査結果と身体所見がつながっていない場合も多い。症状が出ていなければ、私は「食べても問題ないですよ」と説明することが多いです。
鵜呑みにして、いきなり食事制限すべきではない
もし、強いアレルギーがあれば、鼻水、咳、かゆみなど、はっきりとした症状が出るはずです。その場合は、ぜひ、医師に相談しましょう。症状の内容を具体的に話して、アレルギー検査を受けてみたいと素直に伝えれば、適切な検査を紹介してくれるはずです。
アレルギー検査と一言で言っても、様々な種類があり、信頼性・精度に差がある。たとえ結果が陽性でも、それを鵜吞みにして、いきなり食事制限をすべきではありません。あくまでも症状などを見て総合的に判断すべきです。
伊藤大介(いとう・だいすけ)
1984年、岐阜県生まれ。東京大学医学部卒業後、同大医学部外科博士課程修了。肝胆膵の外科医を経て、その後、内科医・皮膚科医に転身。日本赤十字医療センターや公立昭和病院などを経て、2020年に一之江駅前ひまわり医院院長に就任。1日に約150人、年間3万人以上の患者を診察する。日本プライマリ・ケア連合学会認定医、同指導医、日本病院総合診療医学会認定医、マンモグラフィ読影医。2025年に日本外科学会優秀論文賞を受賞。
