年間3万人を診察する総合診療医の伊藤大介さんは、「健康診断こそが深刻な病気の『芽』を摘むことができる唯一の方法です」と強調する。
そんな伊藤さんが初の単著『総合診療医が徹底解読 健康診断でここまでわかる』を10月20日に刊行した。
血圧、血糖値、コレステロール、腎機能、がん検診……など検査数値の見方が180度変わる実用的なポイントが満載の内容になっている。今回は本の中から、アレルギー検査の弱点を解説した箇所を一部抜粋して紹介する。
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219種類のアレルギーを調べることができる
アレルギー検査と言っても、いろいろな種類がありますが、代表的なものとしては、血液検査で「特異的IgE抗体」を測るような保険診療でも認められた検査や、自費のみで行われる「遅発型食物アレルギー検査(IgG抗体検査)」などがあります。
遅発型食物アレルギー検査とは、血液中の食品に対するIgG抗体量を調べ、さまざまな食品に対して免疫反応があるかどうかを調べるものです。120種類あるいは219種類の食物アレルギーを調べることができます。
牛肉、白米、小麦、果物、野菜、魚などのメジャーな食べ物はもちろんのこと、シナモンやバジルなどのハーブ系、緑茶や製パン用の酵母であるイーストといったものに至るまで対象範囲も幅広い。
例えば、みなさんの中には「ある食べ物を口にしたら気持ち悪くなったり、下痢をしたりする」「特定の料理を食べた時に口の中がピリピリしてかゆくなる」という経験をした方もいるでしょう。当院でもよく患者さんからこのようなアレルギーと思える症状を相談されます。
さらに、それらの患者さんの多くが「他にどんな食事でアレルギー反応が出るのか知りたい」と言います。原因を特定したい気持ちもよく分かりますし、それにこたえる検査こそが「遅発型食物アレルギー検査」でもあります。
「陽性」でも、すぐさまアレルギーというわけではない
しかし、驚かれるかもしれませんが、実は遅発型食物アレルギー検査は、臨床試験で有効性が証明されたものではないのです。
IgG抗体とは、体内に入った異物に対して、体を守るための免疫として作られるタンパク質のこと。健康な人でも普通に体内で作られているものです。そのため、検査の結果、ある食品に対するIgG抗体が「陽性(免疫反応が出ること)」だったからといって、すぐさまその食品にアレルギーを持っていることを意味するわけではありません。また、その食品が体に悪い影響を及ぼすと決まったわけでもありません。
むしろ陽性反応が出るということは、体内に存在するIgG抗体が正常に機能していることを示している場合が多い。数値が安定していれば、体がその食品を「異物ではない」と認識し、受け入れ、過剰な免疫反応を起こさないよう調節している証拠だとも考えられるのです。
そのため、陽性だからといって、すぐさま特別な対処や食事制限が必要になるわけではないのです。

