連続ドラマ『絶対零度~情報犯罪緊急捜査~』(以下、『絶対零度』)で初の月9(フジテレビ系月曜9時枠)の主演を務めたことで、改めて沢口靖子に注目が集まっている。
沢口靖子は1965年生まれの女優で現在60歳。1984年に東宝と東宝芸能が開催した、第1回東宝「シンデレラ」オーディションでグランプリを受賞。ちなみに同年のファイナリストには斉藤由貴が選ばれている。
これまで、グランプリには野波麻帆(1996年)、長澤まさみ(2000年)、上白石萌歌(2011年)、福本莉子(2016年)、白山乃愛(2022年)などが選ばれており、2011年のニュージェネレーション賞には、浜辺美波が選ばれている。
映画会社が主催する女優オーディションゆえか、「銀幕のスター」という言葉が似合う浮世離れした華やかさを備えた女性が多数選ばれているという印象で、その筆頭が沢口靖子だ。
銀幕デビューを機に朝ドラ『澪つくし』のヒロインへ
グランプリを受賞してすぐに、沢口は『刑事物語3 潮騒の詩』で映画デビュー。
本作は武田鉄矢が、型破りだが人情派の優しい刑事・片山を演じるコメディテイストのアクション映画。沢口は離島で暮らす旅館の娘・松村海子を演じ、同作の挿入歌「潮騒の詩」で歌手デビューも果たした。
同年の12月には、9年ぶりに復活した怪獣映画『ゴジラ』のヒロイン・奥村尚子を演じ、日本アカデミー賞の新人俳優賞を受賞。
映画『ゴジラ-1.0』の浜辺美波を筆頭に、東宝シンデレラに選ばれた女優の多くが『ゴジラ』シリーズに出演しているが、その流れも沢口靖子から始まったと言えるだろう。
そして翌年、沢口は連続テレビ小説(以下、朝ドラ)『澪つくし』のヒロイン・古川かをるに抜擢される。
『週刊現代』(講談社)2019年11月23・30日号に掲載された鼎談(https://gendai.media/articles/-/68972)によると、『澪つくし』の脚本を執筆中に『刑事物語3 潮騒の詩』を観た脚本家のジェームス三木が「こんなカワイイ子見たことない!」と思い、プロデューサーに連絡したところ、「ヒロインはこの子しかいない!」と抜擢されたそうだ。共演した川野太郎は、当時の沢口の透明感は別格で初めて会ったときは「こんなフランス人形のような人がこの世に存在するんだ」と驚いたという。
『澪つくし』の初回視聴率37.1%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)は、当時の朝ドラでは平均的なものだったが、その後どんどん上昇し、最高視聴率55.3%(同)を記録。
ジェームス三木は当時の沢口靖子の得難い魅力を「演技があまり上手くないこと」だと語っており、沢口の演技を観ているとハラハラするが、駆け出しの彼女が一生懸命頑張っている姿を観ているうちに視聴者は彼女の保護者のような気持ちになってくる。それが『澪つくし』の魅力だったと語っている。

