創価学会のなかで現在、会員同士のある議論が、静かながらも熱く盛り上がっている。それは、2023年11月に創価学会が発行した『創価学会教学要綱』という本をめぐっての、まさに"神学論争"的な宗教議論だ。
創価学会とはもともと、静岡県富士宮市に本拠を置く「日蓮正宗」という仏教宗派(日蓮宗の一派)の下部団体(信者組織)として、1930年に創設された宗教団体だ。つまり宗教としての「創価学会の教義」とは、原則的に「日蓮正宗の教義」と一致しているものだった。
しかし創価学会は第3代会長・池田大作(後に名誉会長)が率いる時代になって、この上部団体と対立関係に陥り、1991年に組織ごと日蓮正宗から破門された。以後、創価学会はどこかに上部団体があるわけではない、独立した宗教団体として歩み、現在に至る。
「池田先生のおっしゃること」の重み
しかし、そうなった以上、創価学会として「日蓮正宗の教義」を信じ続けていていいものなのか。そういう問題提起は独立後、それなりに内部でも出ていたのだが、当初はあまり大きな問題にはならなかった。なぜならば、創価学会には絶対のカリスマたる池田大作がいる。多くの創価学会員にとって、「池田先生のおっしゃること」は教義に書いてあることよりも重みがあって、創価学会の教義そのものを深く考えようといった機運は、あまり盛り上がらなかったのである。
しかし2010年以降、高齢になった池田が公の場から姿を消し、その肉声も伝えられなくなると、さすがに創価学会も教義問題を放置できなくなった。以後の創価学会は折に触れて教義改正の発表を繰り返し、日蓮正宗の教義から脱却する姿勢を示してきた。そして前述の『創価学会教学要綱』とは、近年の創価学会の教義改正路線の一つの集大成的な成果として、世に出されたものなのである。
ただ、奇しくも池田の死去(2023年11月15日)に合わせるように発表されたこの『教学要綱』は、創価学会員の一部に少なくない動揺をもたらした。




