「完全に横になれる夜行バス」も登場
競合では、JR東海が2022年から実施している「会いにいこう」キャンペーンで、歌手・AIさん、アイドルグループ・BEYOOOOONDS、バンド・MONGOL800、芸人・ナイチンゲールダンス、オリックス・バファローズ、名古屋グランパスなどをいっせいに起用したCMを開始。明らかに推し活による移動を狙った利用促進策だ。
キャンペーンの一環として新日本プロレスと提携し、棚橋弘至選手の引退試合(2026年1月4日)などへの移動で東海道新幹線を利用すると、車中でオリジナル動画を視聴できる施策も打っている。人気者と組みつつアピールしていく狙いだろうか。
こうした動きもあり、推し活勢の移動を一手に引き受けつつある夜行バス業界は決して盤石ではない。特に近年は「運転手不足」という難題に悩まされている。そこで、今後は待遇改善の意味合いも込めて、値上げが予想される。
先述のWILLER EXPRESSでも、2019年との比較で販売席数が22%減少したにもかかわらず、1席あたりの平均単価は2019年:4848円→2025年:5594円(見込み)と、おおよそ1割以上も上昇している。つまり「人材不足で増発はできないが、プレミア感がある座席の販売が伸びたので、単価が上がって増収増益を確保した」状態だ。
都市と地方を結ぶ移動需要はあるが、どのバス会社も増便は難しい。そもそも、バスがことごとく満席になるほどのアーティストやアイドルはほんの一握りで、どのライブでバスが混み合うか、予想もつきづらい。対応が一筋縄ではいかない推し活需要への対応を模索しながら、そして価格とにらめっこしながらのかじ取りがもとめられる。
ここで気になるのが、2025年12月に本格デビューした、高知駅前観光の「フルフラットシート」(愛称:フラットン)だ。座席がフルフラットになるバスで、同社はこのシートを各社に販売する意向を示しており、全国でどれだけ普及するだろうか。
WILLER EXPRESSも同様の座席を開発中である旨を明言しており、あと数年で全国中に「フルフラットシートの夜行バス」が普及し、これまで以上に「ホテル前泊組」が夜行バスに乗り換える可能性は高い。続く後編では、実際にフルフラットシートのバスに乗車したレポートをお届けする。
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