近年のノーベル賞は、環境問題や貧困の解決に貢献する技術が重視される傾向にある。そうした意味では、堂免(どうめん)一成氏(東京大学特別教授・信州大学特別栄誉教授)は有力候補の一人といえる。氏が開発したのは、太陽光のエネルギーによって高効率で水を水素と酸素に分解する触媒だ。単に粉末を水に加え、光を当てるだけでぶくぶくと泡が発生する動画は、世界の研究者を驚嘆させた。得られた水素を燃やした際の廃棄物は水のみだから、まさに究極のクリーンエネルギーだ。すでに大量生産を目指した実証実験も進行中だが、大規模な実用化がなされれば賞も間近となるだろう。

 理論化学分野では、前田理(さとし)氏(北海道大学教授)の名を挙げる声が高まっている。文科省の「世界トップレベル研究拠点プログラム」の拠点長に最年少の39歳で就任するなど、その実力とリーダーシップは高く評価されていた。新規な化学反応の発見にはこれまで、数多くの試行錯誤とベテラン研究者の勘と経験が必要であったが、氏は量子化学計算を取り入れた、新たな化学反応の経路を探索するアルゴリズムを開発。誰でも使える形でこれを提供し、大きな反響を呼んだ。生成AIとの融合なども進められており、今後の展開にも大いに期待できそうだ。

ノーベル賞の3倍の賞金を誇る賞を獲得した人も

 生理学・医学賞分野においては、森和俊氏(京都大学特別教授)が有力視されている。ノーベル賞の前哨戦といわれるガードナー賞、ラスカー賞をすでに受賞している他、2017年にはノーベル賞の約3倍の賞金で話題を呼んだブレイクスルー賞を獲得している。

ADVERTISEMENT

 タンパク質は一定の形に折りたたまれることでその機能を発揮するが、折りたたみ方に異常があると様々な疾患を引き起こす原因ともなる。森氏は、異常タンパク質を修復・分解する、「品質管理」の仕組みを解明した。近年では、手足の筋肉が動かなくなる難病ALSのメカニズム解明を進めるなど、精力的な研究ぶりが印象的だ。