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ジミー大西の人生を描いたドラマ 明石家さんまが唯一気にしていたこと

ジミー大西を演じた中尾明慶インタビュー

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あの騒動のあと、全部撮りなおしたんですか?

──さんまさんと出会うシーンからして「ありえへん」エピソードなのですが、みな実話というのが驚きです。ゲラゲラと笑って観ていると、いきなり第1話のラストで泣かされます。中尾さんも、明石家さんまさん役の玉山鉄二さんも入魂の演技でしたが、あれは全部新しく撮りなおしたものなのですか? あまりの気迫に「これを2回やったんだろうか?」と不思議な気持ちになりました(このドラマは当初、小出恵介さんがさんま役を務めていたが、無期限活動停止を受け、配信開始直前に中止に。その後、玉山鉄二さんが代役を務めることが発表された)。

「はい、すべて新しく撮り直しました。さんまさんが唯一気にしていたのが、第1話のラストと最終回のラストでした。『撮り直しでたいへんだと思うけど、頼むな!』と言われたんですが、その『頼むな』いらない! すごいプレッシャーになるから、って思いました(笑)。

 長野でロケしてたんですけど、ご飯もみんなと一切いかなかったくらい、自分を追い込みましたし、正直、怖かったです。前の人のお芝居の記憶もやっぱり少し残っているし……でも玉山さんはさすがでした。僕は玉山さん演じるさんまさんの言葉に泣かされるわけですから、すごく助けてもらったと感謝してます」

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「笑えへんことなんてなんぼでもあんねん。それでも……」

 高校野球をしていたときも、監督の出すサインが覚えられず、監督を困らせ、学生生活でもいじめっ子たちにしつこくからかわれていた大西少年。就職の決まらないのを心配した恩師が口利きをしてくれて、吉本興業に出入りするようになる。高校を卒業し、「なんば花月」の舞台進行見習いをしていたとき、明石家さんまと衝撃の出会いを果たす。さんまに面白がられ、ひょんなことから吉本新喜劇に出演することになるが、そこでも空回りして大失敗。吉本興業の幹部を激怒させる事態になってしまう。

ジミー大西のマネージャー高宮京子を演じるのは、先日玉木宏さんとの婚約を発表した木南晴夏さん ©2018YD クリエイション

──ドラマの中で心に残った台詞はありますか。

「第1話のラストシーンでは、何をやってもうまくいかないみじめさや、大好きなさんまさんに迷惑をかけてしまった申し訳なさ、情けなさ、不甲斐なさを、ジミーさんが抱えきれなくなってしまいます。そこでさんまさんがジミーさんに『あのな。この世に笑えへんことなんてなんぼでもあんねん。でもそれ全部おもろい思うて笑うたったら、笑ったもんの勝ちになんのや』というセリフがあるんです。

 たぶんこの台詞は、さんまさんの生き様、生き方そのものだと思うんですよ。さんまさんだって、本当はいやなこともあるし、苦しいことのほうが多いはずなのに、なんでいつも、この人はずっと笑ってられるんだろう。きっと、その根っこには、『笑ったら自分の勝ちになる』っていう信念があるんじゃないかと思うんです」

──中尾さんには、ジミーさんにとってのさんまさんのような存在はいますか。

「なかなかああいう出会いがあることは難しいと思います(笑)。だからこそ、お二人の関係を見て、素敵だなって思います。出会ってから何十年も経つのに、いまだになんか二人とも嬉しそうなんですよ(笑)。ジミーさんは、緊張する、緊張するって言いながら、さんまさんに会うと嬉しくてたまらなくてソワソワしてるし、さんまさんも『なんやお前、またいんのか~』とか言いながらやっぱり嬉しそうだし。お互い相思相愛なんですよね(笑)」

©2018YD クリエイション