2008年、インドで13歳の少女の遺体が発見された。さらに当初「犯人」と疑われた使用人の男までが殺害された⋯⋯。インド最大の未解決事件とも言われる本事件はその後、どんな顛末を迎えたのか? 今なお真相が闇に包まれた古今東西81のコールドケースを扱った文庫『読んで震えろ! 世界の未解決ミステリー』(鉄人社)より一部抜粋してお届けする。(全2回の2回目/最初から読む

写真はイメージ ©getty

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両親の「不正行為」が発覚したが⋯

 警察は現場に外部からの侵入の跡がないことを確認したうえで、嫌疑をアルシの両親に向ける。捜査当局の見立てによれば、5月15日の夜、父ラジェッシュがアルシの部屋のドアを開け、娘とヘムラッジが体を寄せ合っているのを目撃。その姿に怒り狂い、2人を殺害したのだという。

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 そもそも両親の隣の部屋で寝ている娘が殺害されたのに、翌朝まで気づかないのはあまりに不自然というのも彼らの主張だった。アルシの遺体発見後、両親が真っ先にヘムラッジを犯人扱いしたのも警察の捜査を混乱させるためで、父ラジェッシュはヘムラッジを捕まえるためなら必要な経費は用意すると、警察に金銭の支払いまで提示していたそうだ。

 両親はアルシの遺体をその日のうちに火葬していたのだが、それも不都合な証拠を隠滅する目的だった可能性があるという。さらに、後の捜査でラジェッシュに愛人女性がいることが発覚。この事実をヘムラッジに知られたことで、口封じのため娘もろとも殺害し、妻ヌーパーに手伝わせヘムラッジの遺体だけを屋上に運んだ可能性にも言及した。

 事件から1週間後の5月23日、警察はラジェッシュを殺人、ヌーパーを殺人幇助の容疑で逮捕した。メディアは、裕福な歯科医夫婦が娘と使用人の男を殺害したとしてスキャンダラスに事件を報道。

 夫婦は別の夫婦とのスワッピングを趣味にしていた、アルシには複数の男性と交際していたばかりかヘムラッジとも性的関係にあったなど、根も葉もない噂を流しまくる。やがてインド国内で同事件の反響が異常なほど大きくなったことでインド中央捜査局(CBI)が捜査を担当、事態は新たな局面を迎えることとなる。