弁護士職員の対応で状況が一変
これまで、悪質なクレーマーの場合、窓口に座り込んで何時間も怒鳴り散らすようなこともあり、対応した職員が「ごめんなさい」と謝っても、「ごめんで済むか! 甘えるな」とさらに手に負えなくなり、そんなことで1日忙殺されて精神を病んでしまうような状況もあったようです。
しかし、弁護士職員を揃えたことで、電話であればすぐに電話を代わってもらえばよく、窓口に来た場合でも「相談室にどうぞ」と招き入れて「お話、伺います」と弁護士職員が出ていくことで、ほかの職員はクレーマー対応に頭を悩ませる必要がなくなりました。
弁護士相手に理不尽な文句を1時間も話せる人はまずいません。交渉のプロである弁護士が揃ったことで、面倒なクレーマー自体も少なくなりました。これにより職員はストレスなく本来の業務に集中することができるようになったのです。
当初は「なんで弁護士なんか採用するんや」と専門職採用に抵抗感を示していた職員たちも、クレーマー対応から解放されたことで「ほんまに助かった!」と感謝していました。
ほかにも税金や保険料、市営住宅家賃などの滞納者への督促業務においても、弁護士職員が活躍しました。
謎の「30万滞納ルール」があったが…
私が市長になった当初、明石市には「30万ルール」という不思議なルールがありました。
これは、「市営住宅の家賃を滞納している人に対して、滞納金額が30万円になってから督促の声をかける」というものでした。市営住宅の家賃は、月に1万円から2万円程度です。30万円まで滞納しないと声をかけないということは、つまり1年も2年も滞納してようやく、「あなた、すでにこんなに滞納していますから払ってください」と声をかけるということです。
しかし、月々の1万円すら支払えずにいる人が、いきなり30万円もの滞納金を請求されたとして、「はい、そうですね」と払えるものでしょうか。どうしても払えないとなれば、立ち退きも含めたシビアな現実が待ち受けています。