夫のカウンセリングから分かったこととは?
夫とは上司の紹介で出会い、プロポーズされた時は「夢のようだった」と言います。心理テスト結果からは、極端に低い自己評価、親から受けた言葉によるトラウマが残っており、傷つきが多過ぎて、被害に遭っている事への鈍感さも認められました。強い愛情欲求を抱えていて、夫にそれを求めているのですが、現状では夫からのダメージが親からの言動と重なっている状態です。
則之さんは、やはり地方出身、比較的裕福な家庭で育っており、小学校から成績優秀。親にとっては自慢の息子、教師からも一目置かれる優秀さで、地域でも「頭のいい子」という扱いだったそうです。妹は成績が悪く、則之さんだけが大切にされたとの事でした。心理テスト結果は和子さんと逆で、自己評価が非常に高く、愛情欲求にも問題なし。ただ、自己評価が高いゆえに物事や人を思い通りに動かそうとする傾向が認められました。
和子さんに対する愛情がない訳ではなく、家族を大切にしたい思いはあるようです。けれど、人の気持ちには鈍感で、家族を大切にする方法が学べていない傾向がありました。
こうして夫は改心した
則之さんには、和子さんのトラウマについて理解してもらうと同時に、「バカ」「頭が悪い」という発言はモラハラになる事、また、子どもが親をバカにして育つと、将来的に子どもの自己評価が下がってしまったり、家庭内暴力などに発展するリスクがある事も説明しました。その上で、まずは「バカ」「頭が悪い」と言うのをやめてもらうよう、お伝えしました。
「妻が私の言葉にそんなに傷ついているなんて知らなくて。それに妻の育ちの話も聞いた事がありませんでした。子ども時代、辛い思いをしていたんですね。私がその傷を深めるような事をしていたとしたら、それは素直に妻に申し訳ないと思います。それに、言われてみれば、娘が母親の事を『バカ』と言うのは、良くない事ですよね」
則之さんは「当たり前の事に気づいていなかったな」とつぶやきました。そしてさらに、「結婚当初から妻が私に『私と結婚してくれて本当にありがとう』とよく言っていたので、傲慢になっていたんだと思います」と続けました。
「和子さんの傷を癒してあげられるのは則之さんだけなんです。幸せにしてあげられるのも。それに、娘さんはお母さんの事大好きですよね?」
則之さんは頷きます。
「両親の事を好きでいられるって、子どもが幸せを感じる為に重要な事です。家族の幸せは則之さんにかかっている、という事です」
この言葉は則之さんに響いたようでした。