高市早苗政権の発足にともない、鈴木憲和氏(43)が農林水産大臣に就任した。小泉進次郎氏からバトンを受けた鈴木氏は、この国の農政をどこに導くのか。ノンフィクション作家の奥野修司氏がその“本音”に迫った。
◆◆◆
――早速ですが、鈴木大臣はこの国の「食」の未来にどんなイメージを抱いていますか。そして、その未来に向けてどんな舵取りをするつもりですか。
鈴木 間違いなく言えるのは、需要を拡大すること。これが大前提ですね。これができなかったら、この国の農業の将来はないと思う。だからここに資源を投入します。これが第一です。その上で何ができるか。日本製は安心で高品質というブランド力が今もあります。これは農産品も同じだから、世界のマーケットで戦うことができるはずです。私は農業を日本の「稼ぎ柱」にしたい。稼ぎ頭とは行かなくとも、日本経済を支えるひとつの「柱」にすることはできると思います。
「稼いでね、稼ぐのよ」
――この前の山形での講演でも話していましたが、総理から大臣就任を電話で打診された時、「稼いでね、稼げるようにしてね、稼ぐのよ」と言われたそうですね。
鈴木 あれは皆さんの前だからちょっと面白く言ったんですけど、ほぼあの通りです。
――怖いですね。
鈴木 怖かったですよ(笑)。でも総理の意図は、守るのも大事だけど、やっぱり農業は稼げてなんぼでしょ、ということだと思うんです。「責任ある積極財政」もそうだし、腹をくくって投資しますということです。「再生産可能」の農業は当たり前で、これからは「稼がないといかん」に変えていきたいですね。
――大臣は東京育ちなのに、どうして農業分野に興味を持ったのですか。
鈴木 父の実家が山形県南陽市で、1992年に山形新幹線が開通して、帰省する時に東京から直通で行けるようになったのが嬉しかったんです。でも、開通して町が良くなったかといえばそうでもない。ずっと「何が足りないんだろう」と思っていました。大学生になって、日本各地で地域性を形作るものの根底には、農林水産業があると気づきました。それなのに農業で働いている人は儲からずにどんどんやめていき、地域も衰退していく。これって政策が機能していないからではないか。農林水産業で働く人が、やりがいがある社会にしないといい国にならない。それなら、私が頭を使うところは農水省だと思いました。

