――では、なぜ2012年に農水省を辞めて、政治の道へ?
鈴木 農水省を辞めたのは、民主党政権になって役人の限界を感じたからです。当時、民主党政権の水田政策は戸別所得補償(販売価格が生産コストを下回ったときの農業補償制度)が公約でした。あの政策にはすごく疑問を感じて、それを「やれ」と言われても、自分の気持ちを整理して取り組めないと思ったんです。
それに大臣が毎年のように替わって、時には正しくないのに「やれ」と言われることもある。それではやる気がなくなる。私が大臣になってやめる人もいるかもしれませんが、現場の皆さんと一緒にこの国を作っていきたいという思いは強い。政治家になって13年、ずっと農水大臣をやりたいと思っていたので、ようやくここまで来たという思いです。
作りすぎて暴落するのが一番のリスク
――石破前政権で、突然、米の輸出を増やすとなったときも、農水省は大変だったようですね。
鈴木 米が余れば輸出すればいい、と発想するのはわかりますが、それが簡単にできるならとっくにやっています。米の輸出ビジネスを始めるなら、国が長期にわたって支えられるのかどうかが問われます。それなりの時間をかけて政策を練らないと無理なんです。
――農家が「再生産ができ、再投資ができる環境を整える」と就任会見で発言されましたが、それには米価の安定が必要です。一方で、「米の価格は市場に任せる」という。それで再生産可能な価格は維持できますか。
鈴木 私どもの考えは、まず需給の安定を図る、ということです。昨年の夏のように、お米が店に並ばないという事態は二度と起こしません。これは必ずやります。まだまだ日本には主食用の米の生産力がありますから、やろうと思ったら必ずできるんです。
問題は、たくさん作りすぎて価格が暴落すること、これが農業経営の一番のリスクです。もちろん収入保険などで対応できる面もありますが、大規模農家が人を雇っても、「儲からなかったからやめてもらいます」では安定的な経営はできないし、事業拡大も難しいです。昨今の物価上昇にともなって、賃金を上げないといけないのは農業も同じです。それには価格を安定させて先を見通せるようにしないといけない。その価格はマーケットで決まるべきだと思っていますが、その前に、国が需給の見通しをしっかり示すことが価格の安定につながる。そのうえで生産者や流通に関わる人たち、そして消費者の考えをよく聞いていきたいと思っています。
※本記事の全文(約7000字)は、「文藝春秋」1月号と、月刊文藝春秋のウェブメディア「文藝春秋PLUS」に掲載されています(「鈴木憲和農相インタビュー『農業は稼げてなんぼでしょ、というのが総理の考えです』」)。 全文では、以下の内容をお読みいただけます。
・農水省は「現場のことはわからない」?
・2030年には35万トン輸出へ
・農地は国の公共財

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出典元
【文藝春秋 目次】前駐中国大使が渾身の緊急提言! 高市総理の対中戦略「3つの処方箋」/霞が関名鑑 高市首相を支える60人/僕の、わたしの オヤジとおふくろ
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