トルドー氏の父と交際していた“有名スター”
それまでは独身の首相だったピエールは、アメリカを代表する大歌手/俳優のバーブラ・ストライサンドと交際していた。ピエールは50歳、ストライサンドは27歳と年齢は大きく離れていた。当時、カナダで行われた公式の催事に首相と共に出席したストライサンドは、こう語っている。
「この国の指導者である、この高名な男性と腕を組んで会場に入った時、少しだけジャッキー・ケネディになったような気分になりました」
ジャッキー・ケネディはアメリカ合衆国第35代大統領ジョン・F・ケネディの妻、つまりファーストレディだ。のちにケネディがジャッキーの目の前で暗殺されたことからジャッキーは悲劇のファーストレディとなってしまうが、ケネディの就任当初は良家出身の品の良さと洗練されたファッションセンスによってセンセーションを巻き起こしていた。
弱冠31歳の若さで、世界をリードする大国アメリカの象徴である大統領の側に立ち、エリザベス女王など他国の王族や首脳と謁見する姿が多くのアメリカ人、分けても女性たちの憧れの的となった。
アメリカ人が持つ、ファーストファミリーへの憧れ
王室や皇室を持つ国には、その存在に反対する声もあるとはいえ、総じて人はロイヤルファミリー的な存在を欲する傾向にある。王室も皇室も持たないアメリカでは大統領一家、ファーストファミリーが時にそうした存在となる。バーブラ・ストライサンドにもロイヤルファミリーへの憧れがあったからこそ、カナダ首相と共にドレスアップして公の場に出た自分をジャッキー・ケネディと重ね合わせたのだ。
アメリカ人が憧れるファーストファミリー像は、大統領とファーストレディが若々しく、市民に慕われることが第一。加えて幼い子供とマスコットの愛犬もいれば満点となる。いわば保守的ともいえる、古き良き伝統的な家庭像だ。近年ではバラク・オバマ元大統領とミシェル・オバマがその理想像に当てはまった。
当初、米国史上初の黒人ファーストレディとして保守派から悪意ある揶揄をされることも多かったミシェルだが、2009年当時の不況下にあえて明るい色やデザイン、かつ庶民にも手の届く価格帯の J.Crew の服を選び、エクササイズで鍛えた身体で着こなすなど、独自のファッションセンスで人気を得た。子供対象のプログラムを多数手掛け、公式の場でも常に明るく振る舞い、アメリカ市民に愛された。

