日本の著作権法はどこまで適用される?

(3)海外のサーバーでAI開発、日本の法律は関係ある?

事例:日本国内の事業者Xが、(1)A国内のサーバーを利用してウェブ上のデータをダウンロードし(行為(1))、(2)同じくA国内のサーバーで学習用データセット作成とAIの学習を行った(行為(2))。その後、(3)完成したデータセットとAIモデルを日本国内のサーバーにコピーし(行為(3))、(4)日本国内のサーバー上で公開した(行為(4))。これらの作業を行ったのは、日本国内にいるXの従業員である。この場合、日本の著作権法はどこまで適用されるのか。

 このように国境をまたいでAI開発が行われる場合、当該開発行為にどの国の法律が適用されるか(これを「準拠法」の問題という)が重要になる。上記事例の場合、行為(1)(データのダウンロード)や行為(2)(学習)がA国で行われているため、それらの行為に日本の著作権法が適用されるのかが問題となる。

 一般的に、著作権法に関する準拠法の問題は「著作物の利用行為地がどこか」で判断される。本件では、データの複製の結果はA国で発生している(行為(1)(2))が、AI学習を目的とした複製の場合、複製物をそのまま出力することを目的としていない。したがって、複製という「行為」そのものが実質的に行われた地、つまり対象著作物の利用主体である企業及び作業者が存在している日本が利用行為地と捉えられ、行為(1)(2)については、日本の著作権法が適用される可能性が高いと考えられる。したがって、本事例の行為(1)(2)については日本の著作権法30条の4が適用され、適法となる可能性が高い。

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 なお、「学習対象の著作物の著作権者が外国企業(または外国人)の場合でも、日本の著作権法30条の4は適用されるのか」という質問もよく受けるが、これは無関係である。準拠法の問題はあくまで「利用行為地」が日本国内か否かで判断され、当該著作物の著作権者が日本の企業なのか外国の企業なのかは無関係である。したがって、外国の企業(あるいは個人)が著作権を有する著作物についても、当該著作物の利用行為地が日本国内であれば著作権法30条の4は適用され、適法となる。

 また、同様の理由によって、利用する著作物が提供されているサイトのサーバー所在地は利用行為地の判断にあたり考慮されない。つまり、外国に所在するサーバー上に存在する著作物をクローリングする場合においても、クローリング対象となった著作物を蓄積するサーバーが日本国内であれば、あるいは作業者が日本国内にいれば、日本国著作権法が適用される。

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