「まさか私の親友をレイプするなんて」

 お金があれば幸せになれる――そう信じて疑わない人は多い。だが阿部恭子氏が支援の現場で見てきたのは、「お金があるからこそ壊れていく家族」だった。

 新刊『お金持ちはなぜ不幸になるのか』(幻冬舎)より、裕福な家庭に嫁ぎながら、静かに追い詰められていった30代女性のケースを紹介する。親のコネで大企業に入社できるほど恵まれた夫、専業主婦として保障された生活──それでも彼女は、家庭の中で居場所を失っていった。理由は何だったのか? なおプライバシー保護の観点から、本文中の人物名はいずれも仮名である。(全2回の1回目/続きを読む

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写真はイメージ ©getty

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子どもが欲しいと夫に土下座

「お願いします! あとひとり、あとひとりだけ子を授けてください。お願いします!」

 私は土下座して、夫に子作りをして欲しいと頼み込みました。こんなことは、決して初めてではありません。夫は私を抱きたがらないのです。

 夫との間にはふたりの女の子がいます。長女が生まれるまで夫は子作りに積極的でした。ふたり目は仕方なく、でも三人はいらないと……。

「もう、勘弁してくれよ。無理なものは無理だ」

 耐え切れずに寝室を出ていこうとする夫の良太(三十代)に、私はすがりつきました。

「お願い!」

「もう、うんざりなんだよ!」

 良太は大きな溜息をつきながらベッドの端に座りました。

 産んでも産んでも満たされない……。子どもは子どもで「私」ではないのだから……。それは痛いほどわかっています。それでも母親でいる時、私は家族に必要とされ、私の居場所が与えられるのです。だから、どんなに屈辱的な思いをしたとしても子どもを産みたい、産まなくちゃならない……。

「どうしたの?」

 長女が目を覚まし、心配そうな様子で寝室の扉を開けました。