異形のトンネル、信じられないほど狭い道、常軌を逸した急カーブ……。

 日本各地には、思わず目を疑うような“仰天道路”が点在している。そんな中から、見た目のインパクトや走行のスリルが桁違いな「選りすぐりの道」を集めたのが、『日本の仰天道路』(実業之日本社)だ。

 ここでは、その中から特にインパクトのある道を抜粋して紹介する。舞台は福井県敦賀市・南越前町福井県道207号今庄水津線等の「北陸本線旧トンネル群」。実際に足を運び、現地を取材することで見えてきた、その驚くべき姿とは――。

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なんとも贅沢な道

 我が国の歴史において、明治20年代から30年代にかけて全国的に進められた、関東、関西、東北、北陸など各広域圏を連絡する幹線鉄道網の完成は、交通に限らずあらゆる分野の近代化に劇的な影響を与える空前の出来事だったが、その実現のために当時の技術者たちは、碓氷峠(信越線)や板谷峠(奥羽線)、木ノ芽峠(北陸線)など、名だたる交通の難所に初めて近代的土木技術を以て挑み、苦戦のうえに辛勝を収めた。

木ノ芽峠越えのサミットに待ち受ける区間中最長1220mの山中隧道。待避坑の存在が鉄道トンネルだった証しだ。建設中、飯場にコレラが蔓延し、70人近い作業員が亡くなっているという
ほとんどのトンネルは直線で見通しがよく、先入車優先で通行されるが、中にカーブがあるこの伊良谷隧道は閉塞信号による交互通行だ

 後にこれら難所はより高規格な新線に更新され、北陸線の木ノ芽峠においても1962年(昭和37年)の北陸トンネル開通と引き換えに、1896年(明治29年)開業以来の12本の明治トンネル群が役目を終えたが、これらは道路として余命を繋いだ。

トンネルに次ぐトンネルは、いかにも鉄道らしい眺め

 うち11本は現在も当初の姿を保つ単線(1車線)の道路トンネルとして利用されている。

山中隧道の南越前町側坑口前は、かつての山中信号場の跡地。スイッチバック式の廃線跡が観察できる
旧線の車窓は、眼下に広がる敦賀湾の絶景を以て知られていた。トンネル群が中休みをする杉津駅跡付近が最良のビューポイント

 往年のD51形蒸気機関車が黒煙を撫でつけながら潜った壮厳なトンネル群を、鉄道ファンに深く愛された敦賀湾の絶景とともに堪能できる、なんとも贅沢な道だ。

次の記事に続く 広大な景色なのに「この先危険につき関係者以外立入禁止」…長野―群馬県境の峠で遭遇した“非日常感たっぷりの標識”とは