異形のトンネル、信じられないほど狭い道、常軌を逸した急カーブ……。

 日本各地には、思わず目を疑うような“仰天道路”が点在している。そんな中から、見た目のインパクトや走行のスリルが桁違いな「選りすぐりの道」を集めたのが、『日本の仰天道路』(実業之日本社)だ。

 ここでは、その中から特にインパクトのある道を抜粋して紹介する。舞台は岐阜県山県市・下呂市の「どこにも接続しない道路」。実際に足を運び、現地を取材することで見えてきた、その驚くべき姿とは――。(全5回の5回目/はじめから読む

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 航空写真を眺めていると、気になる光景が目に留まった。山の中に2車線の立派な舗装路がポツンと取り残されていた。舗装路はどこにも繋がっておらず、森の中に道路が浮かんでいるようだった。

舗装されラインまで引かれているのに、突然道路が終わってしまう

 早速現地に向かうと、未舗装の林道の先に、いきなり2車線の舗装路が現れた。真新しいアスファルトの上には無数の落石が転がり、草も生えている。舗装が突然途切れ、その先に道はなかった。

舗装路が突然緑に覆われ、その先に道はなかった

 なぜこんなことになっているのか。ことの発端は、1969年(昭和44年)に策定された大規模林業圏開発計画だった。全国に2200kmの幹線林道を整備する国家的プロジェクトだ。

岐阜県の馬瀬・萩原区間では、2車線の舗装路の奥が突然、1車線の未舗装路となっている。この未舗装路が唯一、外部と繋がっている

 森林開発公団が建設していたが、2003年(平成15年)に公団が解体され、独立行政法人緑資源機構が引き継いだ。その4年後に談合事件が発覚し、機構は廃止に。

上の舗装を1kmほど進むと、突如として終わりを迎える

 事業の実施主体は国から都道府県に移管され、建設はほぼ止まっている。

真新しいアスファルトから草が茂っている不思議な光景

 80年はかかるといわれていた林道計画だったが、永遠に完成することはなさそうである。

最初から記事を読む 「なぜここにトンネルが?」まるでゲームのような光景…北海道でポツンと佇む隧道がつくられた“意外な経緯”