異形のトンネル、信じられないほど狭い道、常軌を逸した急カーブ……。

 日本各地には、思わず目を疑うような“仰天道路”が点在している。そんな中から、見た目のインパクトや走行のスリルが桁違いな「選りすぐりの道」を集めたのが、『日本の仰天道路』(実業之日本社)だ。

 ここでは、その中から特にインパクトのある道を抜粋して紹介する。舞台は長野県高山村、群馬県嬬恋村の「長野県道・群馬県道112号 毛無峠」。実際に足を運び、現地を取材することで見えてきた、その驚くべき姿とは――。

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非日常の世界を堪能できる峠

 日本には地形図に名前が記載されているものだけでも4500ヶ所を超える数の峠があるという。峠はわかりやすい境界であり、日常から少しだけ離れた異界の入口といえるが、車でたどりつける峠の中でもことさらに景色が日本離れしているのが、上信国境の毛無峠だ。

毛無峠の頂上に待ち受ける群馬県境の標識。背景は噴煙をくゆらせる浅間山。見慣れた標識が、吹き曝しの荒野に佇む姿は、どこか日本離れして見える

 頂上には「群馬県」「この先危険につき関係者以外立入禁止」という標識が待ち受ける。

海抜1823mの毛無峠のすぐ近くを小串鉱山の鉄索が越えていた。1971年(昭和46年)に閉山したが、現在でも赤錆びた支柱が点々と立つ

 行政が設置した普段よく見る県境の標識が、強烈な季節風と火山性の地質に起因する荒涼の中で、逆に異界感を際立たせた逸品である。

毛無峠より望む一般車両通行禁止の群馬県側。右奥が小串鉱山の跡
地。昭和30年代には2000人が暮らす鉱山都市だった

 過酷な環境に置かれ続けたこの有名な標識は、2025年(令和7年)に新品に置き換えられたが、「わかっている」群馬県は、はじめから経年劣化の加工を実装した。道路としての純粋さを求める向きにはいささか興ざめだが、安心してほしい。

峠へ通じる長野県側の道路風景。長野盆地越しに北アルプスの大パノラマが広がる
上信スカイラインから毛無峠への分岐に立つ案内標識

 たどりつけば標識などそっちのけで景色に呑まれることになる。長野県の果ては群馬県へ通じていた。しかし立ち入りは当局によって規制されている。そんな非日常の世界を堪能できる。

次の記事に続く 高知空港そばの田園地帯に突然現れる“ナゾのコンクリ構造物”…歴史を振り返ってわかった、その“意外な正体”とは